小泉進次郎農水相が衆院農林水産委員会で、一部のコメ卸売業者が前年比500%もの営業利益を上げていると指摘した発言が、ネット上で波紋を呼んでいる。この発言を受け、「業者がコメを出し惜しみして価格を釣り上げているのではないか」といった憶測も一部で出ている状況だ。備蓄米の流通促進を進める中での異例の発言は、業界内で強い反発を招いている。こうした中、答弁内容に該当すると報じられた大手卸売業者の一つが、利益急増の背景について事情を説明した。
小泉農水相、異例の言及
2025年6月5日の衆院農林水産委員会で、コメの流通に関する質問に対し、小泉農水相は具体的な社名は伏せつつも、「米の卸売の大手の営業利益を見ますと、ある会社では、何と対前年比500%ぐらいです」と述べた。さらに、他の卸大手も250%を超えていることに触れ、「この上がり方は異常」だと指摘。食品小売業者から「極めて複雑怪奇なブラックボックスだ」と言われているとも説明し、コメ卸業界に改善を促した。この発言はすぐにニュースで報じられ、複数の業者が特定されたとする書き込みがネット上で見られるようになった。
米袋が積み上げられたイメージ画像。コメの流通問題を示唆
特定された業者と反発の声
小泉農水相の発言後、メディア報道などにより、対前年比約500%の営業利益を計上した業者として、老舗の木徳神糧(東京都千代田区)が念頭に置かれていると報じられた。これに対し、卸売業界からは「これまで低い利益率でやってきた。切り取りで悪者にされるのは我慢ならない」といった猛反発の声が出ていると産経新聞が6日に報じている。業界は、過去の薄利多売の歴史がある中で、現在の状況が適切に理解されていないことに不満を募らせている。
衆院農水委員会で答弁する小泉農水相。後方には備蓄米の山
木徳神糧、決算で見る「500%」の実態
実際に木徳神糧が5月8日に発表した1~3月期の決算を見ると、米穀事業の営業利益は19億2900万円であり、前年同期比で487.4%増となっている。この数字は、小泉農水相が言及した「500%ぐらい」という数字とほぼ一致する。それでは、なぜこれほど大幅な増益となったのだろうか。
老舗卸が語る「利益急増」の背景
この点について、木徳神糧の社長室は6月9日、J-CASTニュースの取材に対し、利益急増の背景を説明した。「米余りの時代には、新米が出る前に在庫を消化しようと、卸同士で価格競争になっていました。利益を薄くしてお米をさばき、スーパーの特売で目玉商品として販売されていました。価格転嫁を進められなかった薄利多売の歴史があります」。同社は、長年にわたる薄利多売構造から、ようやく適正な価格転嫁が進んだ結果として、営業利益率が改善したものであると説明している。これは、コメ卸業界が過去に直面していた構造的な課題と、現在の市場環境の変化が影響していることを示唆している。
結論
小泉農水相による一部コメ卸売業者の「営業利益500%増」への言及は、コメの流通と価格形成の不透明さに対する問題提起として注目を集めた。一方で、該当すると報じられた業者からは、過去の薄利多売の歴史からの脱却と、ようやく価格転嫁が進んだ結果であるとの説明がなされている。この状況は、単に利益率の数字だけを見て判断することの難しさを示しており、コメ流通の構造的な課題と、それに対する異なる立場の視点が存在することを浮き彫りにしている。