政府・与党が成立を目指す年金改革法案は、立憲民主党の修正案を取り込み、厚生年金の資金を基礎年金底上げに充てる方向です。これにより厚生年金加入者の受給額が減ることはないとされていますが、この修正を主導した立憲民主党は、意図とは裏腹に大きな逆風に晒されています。特に、同法案によって遺族年金が実質的に“改悪”されるとの批判も渦巻いており、波紋が広がっています。
基礎年金「底上げ」案とは何か?
まず、年金改革法案の基礎年金「底上げ」案の仕組みです。これは、会社員等が加入する厚生年金の減額期間を延長し、その財源を国民年金を含む基礎年金の減額期間短縮に充てることで、所得の低い層に手厚くし、世代間・世代内の不公平感を是正するというものです。
年金制度改革に関する報道写真、厚生年金や基礎年金の議論に関連
日本の年金は基礎年金と厚生年金の2階建てですが、低成長下では基礎年金の減額が長期化し、基礎年金の比率が高い低所得者ほど不利になる問題がありました。政府はこの是正を目指しますが、基礎年金の財源の半分以上は国庫負担のため、「財源が不透明で将来的な増税も視野に入る」とノンフィクションライターの石戸論氏は指摘します。(以下、石戸氏の寄稿より)
石戸論氏の指摘:現役世代は「損」する構造なのか?
石戸氏は、現役世代が損ばかりしていると感じており、今回の法案で厚生年金の積立金が事実上「流用」され、基礎年金の財源に充てられる点に疑問を呈します。賛同する立憲民主党などは「改革」と呼びますが、石戸氏は明確な流用であり、現役世代から高齢者への資金移転の論理が弱いと批判。財源も不透明で、将来的な増税が避けられない可能性を示唆します。
年金の本質を「長生き保険」とした上で、石戸氏は就職氷河期世代以下に広がる経済苦境に言及。年金を軸に生活するには、現役世代が資産形成できる経済状況を作るか、財源安定のための負担増が必要だと訴えています。
今回の年金改革法案は、基礎年金と厚生年金の調整で公平性・持続性向上を目指す一方、「厚生年金流用」「現役世代負担増」との懸念や批判も根強いです。遺族年金「改悪」論も加わり、複雑な議論が続きます。将来の年金制度のあり方について、国民的な議論の一層の深化が求められます。
参考:Yahoo!ニュース