ロサンゼルスで移民取り締まり巡り抗議激化、トランプ政権とカリフォルニア州が対立深化

米カリフォルニア州ロサンゼルス周辺で移民・税関捜査局(ICE)による移民取り締まりへの抗議活動が続く中、トランプ政権は9日、事態に対応するため海兵隊の派遣を決定し、不法移民の疑いがある人々への摘発を強化した。これに対し、デモはさらに激化し、民主党指導者らは国家的な危機だと懸念を表明している。

米政府、ロサンゼルスに部隊派遣・取り締まり強化

当局者によると、南カリフォルニアを拠点とする約700人の海兵隊員が9日夜または10日朝にロサンゼルスに到着する予定だ。彼らは連邦政府の職員と財産を保護する任務を負い、4000人の州兵部隊が到着するまでの一時的な措置とされる。しかし、今回の海兵隊派遣は、要請を受けていない州や地元の指導者の反対を押し切る形での、警察活動を支援するための異例な軍事力行使となる。ノーム国土安全保障省長官は、移民法違反容疑者への取り締まりをさらに拡大すると表明した。トランプ政権はデモを無法な行為だと非難し、州や地元の民主党が騒乱を容認し、いわゆる「聖域都市」で不法移民を保護していると批判している。

カリフォルニア州、トランプ政権を提訴 知事逮捕警告で対立激化

トランプ大統領は、連邦政府による移民取り締まりに抵抗しているとして、カリフォルニア州のニューサム知事(民主党)を逮捕すると警告した。これに対し、カリフォルニア州当局は9日、州兵と海兵隊の派遣は連邦法および州の主権に反するとして、トランプ政権を提訴した。この動きは、米国の二大政党間の分断を一段と深める事態となっている。上院軍事委員会の民主党トップであるジャック・リード上院議員は、トランプ大統領による海兵隊現役部隊の派遣に「深刻な問題」を感じていると述べた。「大統領は知事と市長の権限を強引に覆し、軍隊を政治的武器として使っている。この前例のない動きは、緊迫した状況を国家的な危機に変える恐れがある」とし、「建国以来、国民はこの点に関してはっきりしている。つまり、軍隊が国内で法執行を行うことを望んでいない」と強調した。

カリフォルニア州知事ニューサム氏、移民問題でトランプ政権と対立カリフォルニア州知事ニューサム氏、移民問題でトランプ政権と対立

州知事逮捕巡る応酬と他都市への波及

トランプ政権で国境対策責任者を務めるトム・ホーマン氏は7日、ニューサム知事やロサンゼルスのカレン・バス市長を含む、移民問題に関連する執行活動を妨害する者を逮捕すると警告していた。これを受け、ニューサム知事はNBCニュースのインタビューで「(ホーマン氏は)さっさと逮捕に踏み切ればいい」と挑発的に応じた。トランプ氏は9日、この知事の発言を巡る記者団の質問に対し、「自分ならそうするだろう」と述べ、暴力行為が制御不能に陥るのを防ぐため、州兵の配備を命令するしかなかったとの考えを示した。ニューサム知事はその後、自身のX(旧ツイッター)への投稿で、「民主党員であろうと共和党員であろうと、これは国家として越えてはならない一線だ。紛れもなく権威主義への一歩だ」とし、大統領が米国の現職知事の逮捕を求めるような日が決して来ないことを望むと訴えた。

抗議活動は、ICEが入管法違反の疑いで少なくとも44人を逮捕したことをきっかけに6日夜に始まった。当局とデモ参加者の衝突を受け、トランプ大統領が派遣した州兵が8日、現地に配備された。抗議行動4日目となった9日の深夜、警察はロサンゼルスのダウンタウンにある移民の連邦収容施設の外に集まった数百人のデモ隊を解散させ始めた。警察によると逮捕者も出ている。州兵がバリケードを作り、建物への接近を阻止していた。その後、警察は殺傷力の低い手段を用いてデモ隊を現場から排除しようとした。地元の報道によると、9日にはニューヨーク、フィラデルフィア、サンフランシスコなど、少なくとも他の9都市でも抗議デモが発生した。テキサス州オースティンでは、警察が数百人のデモ参加者と衝突し、非殺傷弾を発射して数人を拘束する事態となった。ロサンゼルスでは一時、移民収容施設の外で数百人のデモ隊がメキシコや中米諸国の旗を掲げ、「全員解放せよ」と唱え、リトルトーキョーでも一時、警察隊とデモ隊が小競り合いを起こした。

今回の移民取り締まりとそれに対する抗議活動、そして連邦政府とカリフォルニア州の激しい対立は、米国内の政治的分断の深刻さを示している。特に、現職知事の逮捕に言及する大統領の発言や、州の意思に反する連邦部隊の派遣といった異例の事態は、今後の米国の国内情勢に大きな影響を与える可能性がある。この問題は、移民政策だけでなく、連邦政府と州の権限、そして法執行における軍の役割という、米国政治の根幹に関わる議論を巻き起こしている。

Source link