日本の代表的なキャラクター企業「サンリオ」が、人気キャラクター「クロミ」の著作権帰属を巡りアニメ会社と訴訟になっている問題が報じられました。企業理念に「みんななかよく」を掲げるサンリオの裏側で展開される泥沼の裁判は、コンテンツ産業におけるクリエイターの権利と企業の利益還元という、より大きな社会問題の一端を示唆しています。
クリエイターを取り巻く環境と紛争の現状
クリエイターが生み出したキャラクターが世界的な人気を博し、企業に莫大な利益をもたらすケースは少なくありません。石油や天然ガスといった資源が乏しい日本にとって、政府がコンテンツビジネスを基幹産業と位置付け推進しようとする動きがあるのもそのためです。しかし、こうした状況下にあっても、実際にキャラクターを生み出すクリエイターの立場は必ずしも強くなく、利益が適切に還元されているとは言いがたい状況が見られます。このため、クリエイターと企業や自治体の間でトラブルに発展する事例は後を絶たず、サンリオのクロミに関する裁判も氷山の一角に過ぎないという指摘があります。
ベテランデザイナーが語るサンリオの過去と現在
1980年代から90年代にかけて、サンリオの著名なキャラクターデザイナーとして活躍したのが、現在はフリーランスとして活動する井上・ヒサト氏です。井上氏は1985年に「ハンギョドン」、1993年には「バッドばつ丸」といった今日でも人気の高いキャラクターを多数デザインした「生みの親」として知られています。井上氏がサンリオを離れた後も、これらのキャラクターは定期的に商品化され、国内外に多くのファンが存在します。
サンリオの人気キャラクター、ハンギョドンやバッドばつ丸の生みの親である井上ヒサト氏
長年キャラクターデザインに携わってきた井上氏は、最近のサンリオについてどう見ているのでしょうか。取材に対し井上氏は、「キャラクター業界では今もサンリオが日本一の会社だと思っている」と話し、自身が生み出したキャラクターへの愛情も変わらないと語りました。
井上ヒサト氏が所有する、自身がデザインしたサンリオキャラクター「ハンギョドン」と「バッドばつ丸」の懐かしいグッズコレクション
変化する環境とキャラクター著作権の問題
一方で井上氏は、「個人的にサンリオとわだかまりはないし、自分が在籍していた頃はクリエイターにとって天国のような会社だった」と過去を振り返りつつも、「最近の様々な騒動を見ると、少し変わってしまったのかなと感じることもある。特に、キャラクターに関する騒動は、何とか改善できないものかと思う」と複雑な胸中を明かしました。コンテンツ産業の重要性が増す中で顕在化するクリエイターと企業の間の著作権や権利を巡る紛争は、業界全体の持続可能な発展に向けた重要な課題と言えるでしょう。
