福岡市教育委員会が市立小中学校の給食改善を進める方針が報じられ、インターネット上では様々な意見が交錯しています。この議論のきっかけとなったのは、ある日の給食で主菜が「唐揚げ1個」だった写真がSNSに投稿されたことでした。写真を見た人々からは、「育ち盛りの小学生には少なすぎる」「かわいそう」「今の給食はこんなにひどいのか」といった批判的な声が多数寄せられました。
この件は、SNSだけでなく、6月11日のフジテレビ系「サン! シャイン」、12日の日本テレビ系「DayDay.」、TBS系「ひるおび」など、複数のテレビ番組で特集が組まれるほど大きな騒動へと発展しています。連日、食料問題がニュースで取り上げられる中で、なぜ子どもたちの給食がこれほど注目され、どのような背景があるのか、そして私たちはこの状況をどう捉えるべきかを深掘りします。
「唐揚げ1個」給食の栄養基準と実態
問題視された給食の献立は、麦ご飯、鶏の唐揚げ1個、春キャベツの味噌汁、牛乳の4品でした。この献立に含まれる麦ご飯や、6種類の野菜が使用された具沢山の味噌汁も含め、栄養面では基準を満たしているとされています。具体的には、合計エネルギー量は620kcal、たんぱく質は26.7g、脂質は24.2gであり、これらは定められた栄養基準を満たしています。
他の学校の献立と比較しても、「唐揚げ1個の給食」のエネルギー量が特別低いわけではありません。例えば、筆者の子どもが通う小学校の6月献立表を見ると、1日分のエネルギー量は549kcal、546kcal、536kcal、625kcal、617kcal、596kcal…と推移しており、むしろ問題となった日の給食の方がエネルギー量が高く、たんぱく質や脂質も同等レベルでした。
福岡市でSNS炎上を招いた「唐揚げ1個」の学校給食の写真 (画像:福岡市学校給食公社公式サイトより)
なぜ「唐揚げ1個」だったのか?過剰反応を分析
この唐揚げが「1個」であった背景には、児童への配膳負担や調理工程の手間を軽減するため、本来2個分のボリュームを1個にまとめて提供するという工夫がありました。つまり、これは一口では食べきれないほどの大きさがある、実質的には2個分に相当する唐揚げだったのです。
批判的な声の多くが「唐揚げが1個しかない」という見た目の数に過剰に反応している感があります。もし量について批判するのであれば、「唐揚げ1個では少ない」ではなく、「唐揚げ2個分でもまだ足りないのではないか」という視点であるべきでしょう。単純な数だけで給食の質を判断するのは、献立の意図や栄養バランスを無視した見方と言えます。
給食献立の全体像と歴史的変遷
給食の献立は、1回ごとの基準はもちろんのこと、1週間や1ヶ月といった長期的な視点で栄養バランスが考慮され、毎日異なるメニューが提供されています。常に全ての献立が、誰もが「これならお腹いっぱいになる」と感じるようなボリューム感のあるメニューで構成されているわけではありません。ある1日の献立だけを切り取って「おかしい」と断じるのは、給食全体の計画性を無視した、公平さを欠く評価と言えるでしょう。
実際、福岡市の給食でも、別の日の献立には豚丼やミルクシチューなど、よりボリューム感を感じやすいメニューも存在していました。
過去の給食事情を振り返ると、昭和の時代にはエネルギー量を優先した「質より量」が求められていました。しかし時代は変化し、現代の給食作りでは、健康面から子どもたちの肥満対策が重視されるようになっています。また、「太りたくない」といった理由で、かつてほどボリュームを求めない子どもたちが増えているといった背景もあります。今回の騒動は、現代の給食が直面する課題や、栄養基準に基づいた献立作成への理解不足を浮き彫りにしたと言えるでしょう。
参考資料:
https://news.yahoo.co.jp/articles/afd9b5fba1f88316bb7771d9564a0bb373383fa2