NHK受信料徴収を大幅強化へ:400億円超の赤字で「出来ることはすべてやる」宣言

NHKは、深刻な財政赤字に直面し、受信料の未払い対策を抜本的に強化すると発表した。2024年度決算で449億円の赤字を計上し、2年連続の赤字となったNHKは、未払い受信料の徴収に本腰を入れ始めている。特に、個人宅への訪問徴収だけでなく、自治体の公用車などに設置されたカーナビゲーションシステムからの徴収も視野に入れるなど、その範囲は広がりを見せている。

NHKの新たな対策と深刻な財政状況

NHKは11月18日、『受信料特別対策センター』を設置し、未払い受信料への民事手続きを大幅に拡大すると公表した。このセンターは弁護士や営業職員で構成され、1年以上受信料が未払いの世帯や事業所に対し、「支払督促」による手続きを強化する専門組織だ。今年度下半期だけでも、昨年度の10倍を超える督促件数が見込まれており、来年度はさらにその数を増やす計画が立てられている。

NHKのこのような積極的な動きの背景には、深刻な財政難がある。2024年度の決算は449億円という巨額の赤字を記録し、2年連続での赤字決算となった。受信料収入は前年度比で過去最大の426億円減となり、NHKはあらゆる手段を講じてこの状況を打開しようとしている。
400億円以上の赤字400億円以上の赤字

11月19日の定例会見で、NHKの稲葉延雄会長は「これ以上未収数が増加しないように歯止めをかけ、減少に転じさせるために出来ることはすべてやりきる」と強い決意を表明した。会長はまた、特別対策センターの発足について「これまで以上に民事手続きによる支払い督促を拡充していくことが目的」であると述べ、徴収強化への強い姿勢を示している。

個人の徴収現場で相次ぐトラブル

受信料徴収の強化に伴い、現場でのトラブルも増えている。特に個人宅への訪問徴収においては、過激な取り立てに関する話が聞かれるようになった。

都内在住の50代男性は、NHK徴収員との遭遇で恐怖を感じた経験を語った。オートロックのない古いマンションに住むこの男性は、普段からインターホンに応対しないため、徴収員と直接話したことはなかったという。しかしある日、男性が自宅のドアの鍵を開けて中に入ろうとした際にインターホンが鳴り、応対するとNHKの徴収員が立っていた。男性は、その徴収員が以前マンションの出入口付近に立っていた人物であることに気づき、「張り込みのようなことをしていたのかと思い恐怖を覚えました」と語った。テレビを所有していないことを説明して帰ってもらったものの、「本当ですかね」と疑われるような口調に不快感を覚えたという。
「さらに督促件数を増やします」と11月19日の会見で述べるNHKの稲葉延雄会長「さらに督促件数を増やします」と11月19日の会見で述べるNHKの稲葉延雄会長

このような個人宅を訪れる徴収員とのトラブルは後を絶たない。

自治体の公用車にも拡大する徴収の網

さらに、NHKの徴収活動は個人だけでなく、公共機関にも及んでいる。最近では、市役所をはじめとする自治体の公用車に設置されたカーナビゲーションシステムにも焦点を当てた受信料徴収が全国的に行われている。

社会部記者の話によると、今年に入ってから全国の自治体でカーナビの受信料未払いが相次いで発覚しているという。例えば愛知県では、公用車のカーナビやテレビなど計226台で、合計2071万9630円の受信料未払いが明らかになった。また、愛知県警の捜査車両や機動隊のトラックなどに設置されていたカーナビ47台においても、863万8350円の未払い受信料があったことが判明している。これらのケースでは遡って支払いが行われたが、同様の未払い事例が各県で次々と発覚しており、NHKの徴収網が広範囲に及んでいる実態が浮き彫りになっている。

NHKは、400億円を超える巨額の赤字という厳しい経営状況から、受信料の未払い問題にこれまで以上に積極的に取り組む姿勢を鮮明にしている。特別対策センターの設置や民事手続きの拡大、さらには個人宅から自治体の公用車に至るまで、その徴収範囲と方法は多岐にわたる。これらの強化策が、NHKの財政再建にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目される。