日本列島は半袖で過ごせる季節を迎え、地域によっては梅雨入り、梅雨明けも近づいています。夏本番を前に、年々厳しさを増す日本の夏における紫外線対策の重要性が改めて注目されています。特に、私たちの「目」が受ける紫外線ダメージは大きく、その健康被害への懸念が高まっています。この記事では、広がりを見せる目の紫外線対策と専門家が語る目の危険性について詳しく見ていきます。
広がる“サングラス着用” 各県警でも導入進む
「災害級の暑さ」が常態化し、ハンディファンやネッククーラーといった冷感グッズが普及する中で、紫外線対策も個人レベルから組織レベルへと拡大しています。男性の日焼け止めや日傘利用が一般化するのに加え、行政機関でも職員の目の保護が進んでいます。昨年から鳥取、長野、青森、広島などの各県警が警察官のサングラス着用を解禁。今年5月には京都府警でも導入され、全国的な動きになりつつあります。青森県警は、着用目的として紫外線による職員の目の健康被害軽減と、直射日光や反射光からの視界確保による交通事故防止を挙げており、目の保護が最優先課題であることが分かります。
紫外線が目に与える急性の影響
金沢医科大学眼科学主任教授であり、NPO法人・紫外線から眼を守るEyes Arc代表の佐々木洋氏は、紫外線が目に与える影響の大きさと健康被害の危険性について警鐘を鳴らしています。佐々木氏によると、紫外線による目の障害は「急性」と「慢性」に大別されます。天気の良い日にサングラスなしで2〜3時間屋外にいると、紫外線性角膜炎を起こす危険性があるといいます。これは急性障害の一つで、黒目に炎症が起こり翌日頃まで目が充血します。ひどい場合には黒目の表面の皮が剥け、激しい痛みを伴うこともあります。白目の充血を伴う結膜炎も、急性障害の代表例です。
繰り返されることで発生する慢性の影響
これらの急性障害を繰り返すことで起こるのが慢性障害です。最も頻繁に見られるのは瞼裂斑（けんれつはん）で、これは白目が黄色く変色したり、盛り上がりや斑点ができる状態です。
現代の野球少年が紫外線から目を守るために装着しているスポーツサングラス
この瞼裂斑が進行すると、白目が黒目の中心に向かって伸びてくる翼状片（よくじょうへん）になります。翼状片が進行して黒目の中心部を覆ってしまうと視力低下、最悪の場合失明に至る可能性もあります。薬では治らず手術が必要となる上、再発することもあるため厄介な病気だと佐々木氏は指摘します。
老眼や白内障との関連、そして子どもの脆弱性
さらに、佐々木氏は中高年が悩む老眼も紫外線によって進行が早まる可能性を示唆しています。特に、水面などからの照り返しで強い紫外線を浴びやすいサーファーなどでは、30代で老眼を発症することもあるそうです。老眼が進むと発症しやすくなる白内障も、紫外線が主な影響因子の一つであるとされています。目の健康を守る上で紫外線対策は必須ですが、佐々木氏によると、特に注意すべきは子どもたちだと言います。
結論：未来の目の健康を守るために
紫外線が引き起こす目の健康被害は、一時的な痛みから視力低下、さらには失明につながる可能性のある慢性疾患まで多岐にわたります。近年、社会全体で目の紫外線対策の重要性が認識され始めていますが、特に水晶体が未発達で紫外線の影響を受けやすい子どもたちの目には、より一層の注意が必要です。適切な対策を講じることで、将来にわたる目の健康を守ることができます。
参考資料：
