中国政府による検閲を経て最終的に国内上映が全面的に禁じられた衝撃作、映画「盲山」(もうざん)が、2024年7月18日より1週間限定で日本公開されることが決定した。「人身売買」という重い社会問題を描いた本作は、そのリアリティあふれる描写で大きな波紋を呼んだ。
「盲山」のワンシーン:人身売買された主人公と村の様子
衝撃的なあらすじ:人身売買された大学生の運命
物語は、割のいい仕事を探していた22歳の大学生、白雪梅(パイ・シューメイ)が、親切を装った若い女性に騙され、人里離れた山奥へと誘い出されるところから始まる。長く過酷な旅の末、眠りから覚めた白雪梅が見たのは、見知らぬ農家の天井だった。財布や身分証明書、手荷物など全てを失った彼女は、自分が40歳の独身男性、黄徳貴(ホアン・デグイ)の花嫁として売られたことを村人から聞かされ、初めて自分が人身売買業者に嵌められたと気づく。村人たちの利己主義や警察の無関心に囲まれ、白雪梅は孤立無援の状況下で奴隷のような生活を強いられる。
月日が経つにつれて黄家からの監視は徐々に緩み、白雪梅はついに自身の家族と連絡を取ることに成功する。ようやく待望の助けが現れたかに見えたが、それは更なる悲劇の始まりに過ぎなかった。この衝撃的な展開は、公開された予告編でもその一部が垣間見られる。
カンヌが高く評価した社会派描写とリアリティ
プロデューサー、脚本、監督を務めたリー・ヤンによる本作は、第60回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、その圧倒的なクオリティーと力強いラストシーンが高く評価された。スリラー要素と冷徹な社会風刺が見事に融合しており、人身売買という深刻なテーマを生々しく、時に残虐性を帯びた描写で描き出すことで、中国国内で大きな社会的反響と波紋を広げた作品である。
撮影は、アン・リー監督の「恋人たちの食卓」や「ベッカムに恋して」など数々の話題作を手がけたジョン・リンが担当。35ミリフィルムで撮影されたドキュメンタリータッチの映像が、物語の生々しい現実を観る者に突きつける。さらにリアリティを追求するため、村人役には演技経験のない地元の農民を、主要キャストには北京電影学院の学生を起用するという徹底した手法が取られている。
日本での限定公開情報
この中国政府によって上映を禁じられた衝撃作、映画「盲山」は、2024年7月18日よりシネマート新宿にて1週間限定で上映される予定だ。
まとめ:深刻な社会問題に光を当てる
中国での上映を禁じられながらも、カンヌ国際映画祭で高い評価を受けた「盲山」は、人身売買という深刻な社会問題を鋭く、そして生々しいリアリティをもって描いた傑作である。その衝撃的な内容は観る者に深い問いを投げかけ、社会の闇に光を当てる。日本での貴重な上映機会となるため、ぜひ劇場でその目で確かめてほしい。