学生の定員割れが6割に迫り、経営の悪化が指摘される私立大学。少子化の影響が深刻化する中、学生募集を停止する私大も相次ぐ。公立化や留学生増員を模索するところもあるが、文部科学省の中央教育審議会は「教育の質が十分に担保されていない機関については撤退を促していくことが望ましい」と厳しい指摘を行っている。問われるべきは大学だけか。厳しい状況の私大関係者や留学生などを取材した。(文・写真:サイエンスジャーナリスト・緑慎也/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
6割が定員割れという危機
取材依頼に対して、二つの大学はこう回答した。
「担当者が長期入院している」
「休暇に入るので対応できない」
また、三つ目の大学は返信もなかった。
尋ねたかったのは、日本高等教育評価機構から「不適合」と判定された件についてだ。同機構は文部科学大臣が認証した評価機関で、大学・短期大学・専門職大学院の教育研究活動の適切性や運営体制を点検している。2025年3月、この機構により東京福祉大学(群馬県)、日本ウェルネススポーツ大学(茨城県)、北洋大学(北海道)の3大学は「不適合」と評価されていた。
だが、いずれも取材に応じる様子はなかった。
日本の私立大学の多くが今、厳しい選択を迫られている。
2024年度、私立の大学598校、短期大学272校のうち、入学者が定員に満たない「定員割れ」は4年制大学で6割近く(354校)、短期大学では9割以上(249校)に及んだ。収入の大半を学費に頼る私大にとって、定員割れは経営危機に直結する問題だ。
学生の募集停止も相次ぐ。高岡法科大学(富山県)、ルーテル学院大学(東京都)が2025年度から、京都ノートルダム女子大学(京都府)が2026年度から学生を募集しないと発表している。
私大にはどんな生き残り策があるのか。その数が今後さらに減ったとき、地域社会や教育の現場にどのような影響が及ぶのか。