「2025年7月5日大地震」デマ、なぜ広がる?ノストラダムス予言との奇妙な共通点

まもなく2025年7月5日が到来します。日本国内だけでなく、海外のSNSでも急速に拡散している「2025年7月5日に日本で巨大地震が発生する」という流説は、気象庁の野村竜一長官が「デマである」と明確に否定しても、その勢いが衰える気配を見せません。この現象は、まるで過去の出来事を彷彿とさせるものがあります。

2025年7月5日予言の根拠と広がり

この流説の根拠として広く指摘されているのが、漫画家・たつき諒氏(70)の著書「私が見た未来 完全版」(飛鳥新社)です。この漫画の中で、たつき氏は《突然、日本とフィリピンの中間あたりの海底がボコンと破裂》し、それによって日本の太平洋側などに《東日本大震災の3倍》にも及ぶ巨大な津波が押し寄せると描いています。この描写が、現在の「7月5日大津波」予言の直接的な根拠となっているのです。

SNS上では、6月17日にインドネシア東部フローレス島で発生した大規模噴火を、この「予言」の前触れとして結びつける投稿も見られます。しかし、インドネシアはたつき氏の描く《日本とフィリピンの中間あたり》の地理的位置とは異なります。人は不安を感じると、往々にして様々な出来事を結びつけて解釈したがる傾向があります。こうした予言騒動に、過去の記憶を重ね合わせる人々も少なくないでしょう。

ノストラダムス予言「1999年7の月」の再燃

歴史上の有名な予言として、「1999年7の月、空から恐怖の大王が来るだろう……」という詩があります。これは16世紀フランスの医師で占星術師、ミシェル・ノストラダムス(1503〜1566)が残したとされるものです。この詩が日本で広く知られるようになったのは、1973年にルポライターの五島勉氏(1929〜2020)による著書「ノストラダムスの大予言」(祥伝社)が出版され、ベストセラーになったことがきっかけです。この書籍では、1999年7月が「人類滅亡の日」として紹介されました。

五島勉著『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)の書影。1999年7の月の人類滅亡予言で知られ、社会現象となったベストセラー。五島勉著『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)の書影。1999年7の月の人類滅亡予言で知られ、社会現象となったベストセラー。

当時の日本は高度経済成長期を経て不景気に入り、1973年には第一次オイルショックが発生するなど、社会的に不安要素が多い時代でした。トイレットペーパーの買い占め騒動なども起こる中、人々の不安感が「ノストラダムスの大予言」を250万部という大ベストセラーに押し上げた背景があると言われています。

一時はブームが下火になったこの予言ですが、1999年が近づくにつれて再び注目を集めるようになります。特に、その前年の1998年に北朝鮮がテポドン1号ミサイルを発射したことが、《空から恐怖の大王が来るだろう》という詩の一節を人々に思い起こさせ、予言への関心を再燃させました。ただし、この予言を強く懸念していたのは日本人だけだったとされ、「日本独自のノストラダムス・フィーバー」と海外メディアに報じられるほどでした。そもそもノストラダムスの詩は抽象的な表現が多く、様々な解釈が可能です。《1999年7の月》という表現自体も、フランス語の原文では単に「1999年と7ヶ月」とも解釈できるなど、曖昧さを含んでいます。

歴史が示す「予言」の検証

1999年7月が目前に迫った同年6月、五島勉氏は朝日新聞のインタビューに応じ、翻訳の難しさに触れつつ、《「7の月」は原語から9月とも解釈できますし、1999年と7ヵ月とみれば2000年7月ともとれます》と語っています。

言うまでもなく、1999年7月も、そして2000年7月も、人類が滅亡することはありませんでした。五島氏は2020年6月16日に亡くなりましたが、その前年には週刊新潮のインタビューにも答えています。

現代の「2025年7月5日大地震予言」が急速に広まる現象は、過去のノストラダムス予言騒動と多くの共通点を持っています。科学的根拠に基づかない情報が、社会的な不安や過去の災害経験と結びつき、人々の間で広がるメカニズムがそこには見て取れます。気象庁が「デマである」と公式に否定しているように、不確かな情報に惑わされず、公的機関からの正確な情報に基づいて行動することが重要です。


参照元: