東京都議選迫る:巨大財政が支える政策、物価高・住宅費対策の行方

今月22日に投開票日が迫る東京都議選は、各党が物価高対策を最重要政策の一つに掲げています。特に、高騰が続く住宅費への支援策は有権者の大きな関心を集めています。「アフォーダブル住宅」の推進、都営住宅の拡充、そして投機目的の不動産取得制限といった提案が議論される背景には、他自治体とは一線を画す東京都の巨大な財政力があります。都政の財政構造とそれが選挙で争点となる政策にどう影響しているのかを探ります。

圧倒的な東京都の財政規模とその背景

東京都の財政規模は、日本の他の地方自治体と比較しても際立っています。今年度の東京都一般会計予算は9兆1080億円に上り、これは単独で多くの国家予算に匹敵する規模です。全会計を合わせると17.8兆円となり、これはスイスやスウェーデンの国家予算並みとも言われています。

東京都の豊かな財源を支えているのは、都内に本社を置く名だたる大企業から中小企業まで、幅広い企業からの法人二税です。これらの税収は年々増加傾向にあり、今年度の一般会計予算が初めて9兆円を超えたことからも、その経済的基盤の強さがうかがえます。前年度の当初予算と比較しても5431億円(8.5%)の大幅な増加となっています。

東京都の税収増加を示すグラフ(出典:日テレNEWS NNN)東京都の税収増加を示すグラフ(出典:日テレNEWS NNN)

潤沢な財政がもたらす政策の選択肢

東京都の潤沢な財政は、他の道府県では実施が難しい規模の政策を可能にしています。例えば、神奈川県の黒岩知事は、東京都が打ち出した水道基本料金の無償化(今夏の4か月間)について、「同じ事が神奈川でもできるかと言えば、とてもできない」と述べています。今年度の神奈川県の全予算合計が4兆6637億円であることを考えると、東京都との財政力の差は歴然としています。

東京都は、この豊かな財政を背景に、手厚い子育て政策や、今回の水道基本料金無償化といった物価高対策など、大規模な個人向け支援策を打ち出すことができています。特に水道基本料金の無償化は、都議選直前かつ本格的な暑さを前に打ち出されたタイミングと、請求書で基本料金が0円と分かりやすく表示されることによるお得感から、有権者へのアピール効果が高い政策と言えます。熱中症対策と物価高対策という目的は、一定の評価を得ています。

東京都の小池都知事と神奈川県の黒岩知事(地方財政の比較に関する文脈)東京都の小池都知事と神奈川県の黒岩知事(地方財政の比較に関する文脈)

都議選と政策:住宅費支援への注目

物価高の中でも特に生活費を圧迫する住宅費への対策は、今回の都議選で重要な争点の一つとなっています。東京都の巨大な財政力は、例えば「アフォーダブル住宅」のような新たな形態の住宅供給や、既存の都営住宅のさらなる提供拡大、さらには投機目的の不動産取得を制限するための税制措置など、積極的な住宅政策を議論する余地を与えています。他の自治体では財源確保が課題となるような野心的な政策も、東京都ではその巨大な予算規模ゆえに現実的な選択肢として議論されるのです。

結論

東京都が持つ圧倒的な財政力は、物価高や住宅費高騰といった喫緊の社会課題に対し、他の自治体では難しい規模やスピード感での対策を可能にしています。今回の都議選では、この潤沢な財源をどのように活用し、都民生活の向上や社会課題の解決に繋げるのかが問われています。「アフォーダブル住宅」や都営住宅、不動産投機規制といった住宅費支援策への注目は、東京都の財政力があってこそ具体的に議論できる政策課題であり、選挙における各党のスタンスが注目されます。

参考文献