美大の学費は高すぎる?人気イラストレーターと美術評論家が語る真の価値

美術大学の学費は一般大学と比較して高額に設定されていることが多く、「多額の費用をかけてまで美大に進学する価値はあるのか」という疑問は、多くの保護者や志望者が抱くものです。この普遍的な問いに対し、人気イラストレーターとして活躍するRella氏と、美術評論家であり大学教員でもある沓名美和氏が対談し、美大教育の真の意義について語りました。現代における美大の役割、専門学校や通信教育との違い、そして美大での学びがプロのイラストレーターとしての活動にどう活かされているのかを探ります。

美術評論家の沓名美和氏(左)とイラストレーターのRella氏(右)。高額な美大の学費に見合う価値について語る。美術評論家の沓名美和氏(左)とイラストレーターのRella氏(右)。高額な美大の学費に見合う価値について語る。

イラストレーターとしての成長と美大の貢献

中国の名門、清華大学美術学院に在学中からイラストレーターとして活動を開始し、「初音ミクシンフォニー」や「初音ミク Happy 16th Birthday -Dear Creators-」といった大型プロジェクトでキービジュアルを手がけてきたRella氏。光と影を巧みに操るその美しい作風は高く評価されていますが、美大での学びは自身のキャリアにどのように影響しているのでしょうか。Rella氏は、特に色彩に対する苦手を克服できた点を挙げます。美大受験の段階で色彩理論の基礎は塾で学んだものの、大学の授業でさらに深い理解を得て実践を重ねたことで、色のバランスを感覚的に捉えられるようになり、絵の見え方自体が変わったと述べています。独学で素晴らしい才能を開花させるイラストレーターも多く存在しますが、キャラクターのアップは得意でも全身のバランスが苦手だったり、複雑なポージングに苦労したりする場合もあるとし、体系的な学びの重要性を示唆しました。

「見る力」と「センス」は生まれつきか?美大で培われる能力

大学という場は、好きな分野だけでなく、自身の苦手な部分とも向き合わざるを得ない環境だと沓名氏は指摘します。Rella氏が色彩という苦手分野に根気強く取り組んだことが、結果として大きな財産になっていると評価。沓名氏自身も大学で教える立場から、美大で得られる最も重要な力は「見る力」、すなわち「審美眼」が養われることだと強調します。好き嫌いにとらわれず、様々な時代の多様な作品に触れて記憶に蓄積することで、それが自身の表現スタイルの基盤となると語ります。

「センスは生まれつきのもの」と思われがちですが、実際はそうではないというのが二人の共通認識です。Rella氏は自身の経験として、絵を描き始めた頃は「赤いリンゴ」を文字通り「赤一色」で捉えていたが、色彩理論を学ぶことで、その赤を表現するためには緑のような補色を効果的に用いる必要があることを理解し、それまで見えていなかった様々な色が「見える」ようになったと語ります。沓名氏もこれに同意し、どのような色をどのように重ねれば対象をリアルに、あるいは意図したように表現できるかという感覚は、まさに経験を積むことで磨かれていく「見る力」の成果であると述べています。美大での体系的な教育は、このような「見る力」や「センス」を後天的に育成するための重要な機会を提供する場と言えるでしょう。

まとめ

美大の教育は高額ながらも、単なる技術習得に留まらず、自身の弱点克服や「審美眼」、すなわち「見る力」を養う機会を提供します。Rella氏と沓名氏の対話からは、「センス」が生まれつきのものではなく、体系的な訓練によって成長させることが可能であるという重要な示唆が得られます。美大で培われるこれらの基礎力や総合的な視点は、イラストレーターとしてだけでなく、あらゆる創造的分野において長期的な成功のための確かな財産となり得るでしょう。

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