「食わせパワハラ」で激太りから肉体改造へ ひげごろーさんが語る壮絶な過去

引き締まった筋肉質の体に、タンクトップスーツという独特のスタイル。金髪のソフトモヒカンに黒縁眼鏡のひげごろーさん(46)は、その個性的な風貌で多くの注目を集めている。しかし、現在の彼の姿からは想像もつかない過去があった。10年以上前、彼は身長173cmで体重122kgという重度の肥満体型だったのだ。なぜ、そしてどのようにして体重が激増し、そこから驚異的な肉体改造を遂げたのか。彼の口から語られたのは、友人による壮絶な「食わせパワハラ」と、そこからの再生の物語だった。

筋トレと減量に成功したひげごろーさん。タンクトップのスーツ姿で鍛え上げられた肉体を見せている。筋トレと減量に成功したひげごろーさん。タンクトップのスーツ姿で鍛え上げられた肉体を見せている。

壮絶な「食わせパワハラ」の実態

ひげごろーさんは高校時代にラグビー、大学時代はアメリカンフットボールとスポーツに打ち込み、当時から体格はがっしりしていた。しかし、大学を卒業して建設会社に入社後、友人の事業を手伝うことになったのが、体重激増の始まりだったという。友人から「お前はキャラがないから、デブになれ」と言われたのが直接のきっかけだ。当時の体重は83kgで、確かに見た目のインパクトには欠けていた。

その友人はパワハラ気質で、「キャラがないからデブになれ」という理不尽な指示のもと、仕事終わりに牛丼やカレーなどを最低1kgは強制的に食べさせられることが頻繁にあった。冗談ではなく、吐くまで食べさせられることも日常茶飯事。「食わせパワハラ」は彼の体を蝕んでいった。

友人との関係性はいつしか、まるで使用者と召使いのように変質していった。最初は地獄のような日々だと感じていたが、次第に強制されなくても食べ物を摂取するようになり、気づいた時には体重は122kgにまで達していたという。過去のスポーツマンとしての体格から、肥満へと大きく姿を変えてしまっていた。

低賃金と暴力…精神をも蝕んだ多重ハラスメント

友人よりも体格が大きかったにも関わらず、なぜ力ずくで抵抗できなかったのかという問いに対し、ひげごろーさんは、友人の方がさらに体格が大きく、力では敵わなかったことを明かした。

ハラスメントは食事の強要だけではなかった。社会保険料の支払いを回避するためか、業務委託契約という形で働かされ、月収は額面で16万円あるかないか、手取りは14万円程度。そこから自分で保険料を支払う必要があり、年収200万円弱という低収入の生活が10年近くも続いた。

さらに、低収入に加えて身体的な暴力も日常的にあった。殴る蹴るは当たり前で、正座させられて3時間もの説教や、木のバットで殴られるといった行為もあったという。あまりに酷い状況に、一度は警察に相談に行ったこともあった。しかし、「被害届を出しますか?」と問われ、一歩踏み出すことを躊躇してしまった。「今思えば、洗脳されていたのかもしれない」と、当時の心理状態を振り返る。

辞めたいと伝えても、「ここを逃げても今より良くなることはない」「お前が悪いんだ」と否定され、最終的には「すみません。頑張ります」と答えるしかない、というお決まりの流れから抜け出せずにいた。しかし、幸いにも次の職場が決まり、思い切ってどうにか辞めることができた。後から妻が有名な縁切り神社で願掛けしてくれていたことを知り、多くの人に支えられていたことに気づかされたという。

健康不安を乗り越えた驚異の肉体改造

転職し、講師として働き始めたひげごろーさんだったが、122kgという体重は彼の体に大きな負担をかけていた。太りすぎで長時間話すのが辛く、健康上の不安を感じるようになり、本格的にダイエットを決意する。

しかし、1年間自己流でダイエットを試みたものの、体重は120kg前後を行ったり来たりするだけで、思うような成果は得られなかった。そんな時、ジムを経営している友人から声がかかり、専門的な指導のもと、本格的な肉体改造を開始することになった。

心機一転、肉体改造の過程を記録するためにTwitterのアカウントを作成。10kg痩せた頃から自身の写真を投稿し始めた。すると、最初のうちは毎月約5kgずつ順調に減量が進み、体重が減るにつれてTwitterのフォロワーの数も増え始めた。これがモチベーション維持に繋がり、ダイエットと筋トレにさらに励む原動力となった。自己流では成し得なかった減量を、友人やSNSでの応援を得ながら着実に成功させていった。

過去を乗り越え手に入れた新しい自分

本格的な指導のもと、計画的な減量と筋力トレーニングを継続したひげごろーさんは、過去の壮絶な経験によって増えた体重を克服し、現在の引き締まった肉体を手に入れた。単なる減量に留まらず、健康的な体と自信を取り戻した彼の物語は、パワハラの深刻さ、そしてそこから立ち上がる人間の強さを示唆している。

ひげごろーさんが経験した「食わせパワハラ」は、単なるいじめや嫌がらせを超え、個人の健康と尊厳を深く傷つける深刻な犯罪行為であり、社会に潜むハラスメントの多様性と悪質さを示唆している。低賃金や暴力も伴う複合的な苦痛から、洗脳状態を乗り越え、自らの力で新しい人生と健康な体を取り戻した彼の道のりは、絶望的な状況からでも希望を見出し、立ち上がることの可能性を私たちに教えてくれる。