元フジテレビアナウンサーの渡邊渚氏が、自身のPTSD(心的外傷後ストレス障害)に関するNHKの密着取材を巡り、深刻なトラブルに見舞われていることが明らかになりました。この長期にわたる取材番組は放送中止の危機に直面し、担当の女性ディレクターは心身の不調から休職に至る事態となっています。
2023年に体調不良で休養に入り、翌年8月にフジテレビを退社した渡邊氏は、フォトエッセイ『透明を満たす』の発売を機に、番組出演やファンクラブ運営など多岐にわたる活動を続けています。退社に至る経緯については、様々なメディアのインタビューで語られるようになり、PTSDの原因には加害者の存在があり、フジテレビ在籍中は病名の公表を控えるよう求められていたことも明かされています。
渡邊渚氏の病状告白とNHK密着取材の経緯
渡邊氏の心の傷に寄り添い、その経験を伝えるべく、NHKは今年の初め頃から彼女への密着取材を開始しました。担当の女性ディレクターは渡邊氏のPTSDに深く共感し、二人は意気投合。単発のインタビューに留まらず、渡邊氏の仕事現場にも取材カメラを派遣するなど、異例の熱の入れようでした。あるイベントでは、NHKが唯一のテレビ局取材となり、現場ではそのことに驚きの声が上がるほどでした。渡邊氏自身も、他のテレビ局からのオファーを全て断り、NHKのみの独占取材という形を選んでいたといい、担当ディレクターとの間に強固な信頼関係が築かれていたことが伺えます。
フジテレビアナウンサー時代の渡邊渚氏フジテレビアナウンサー時代の渡邊渚氏。彼女のPTSDに関するNHKの密着取材は、現在「お蔵入り」の危機に瀕している。
突然の放送中止と背景:NHK上層部の判断
しかし、取材が完了し、編集作業まで進んでいた段階で、NHK上層部から番組放送に「待った」がかけられました。理由としては「取材を行うことに対する許諾を取り切れていなかったため」と説明されたといいますが、実情は「上層部がリスクを回避したかったのではないか」と関係者は見ています。同時期に、加害者とされる人物の代理人から各メディアへ情報発信があったことも影響し、NHKとしては「もう少し経緯を見てから判断しよう」という結論に至ったとされています。しかし、他の取材を断ってまでNHKに希望を託していた渡邊氏にとって、この決定は到底納得できるものではありませんでした。
担当ディレクターの苦悩と局内の波紋
この予期せぬ事態により、担当の女性ディレクターは、放送を強く望む渡邊氏と放送を躊躇するNHKとの間で板挟みとなり、精神状態が崩れて出社できなくなってしまったといいます。期待の若手スタッフが突然休職し、病院に通う事態は局内を騒然とさせました。渡邊氏への密着取材が完全に「お蔵入り」と決定したわけではないものの、放送できる手段やタイミングを慎重に見計らっている状況であり、この半年間、前向きな話は一切聞こえてこないのが現状です。渡邊氏がこの密着取材を「自分と同じ状況で苦しんでいる人たちへの励ましになり、社会貢献につながる」という前向きな思いで取り組んでいたことを考えると、この停滞は双方にとって決してプラスにはなっていません。局内からは、土壇場になって放送に及び腰になった上層部への批判の声も聞かれています。
膠着状態の未来
現在も女性ディレクターは復職を果たせていないとされ、NHKの独占密着取材が陽の目を見る日は来るのか、その行方は不透明なままです。渡邊氏、NHK、そして何よりも番組制作に心血を注いだディレクターにとって、この問題がどのように決着するのか注目が集まります。
出典: Yahoo!ニュース