なぜ米軍はイラン核施設を攻撃したのか?高橋和夫氏の洞察

高橋和夫・放送大学名誉教授による解説によると、米軍がイランの核関連施設への攻撃に踏み切った背景には、イランとの間の交渉が難航していたことがあります。トランプ米大統領は4月以降、協議を通じてウラン濃縮活動の停止を求めてきましたが、イラン側はこれを「正当な権利」だと主張し、応じませんでした。イスラエルによるイラン核施設への空爆後もこの状況は変わらず、事態打開の糸口が見えない中で、イスラエルから軍事介入の要請があったとされます。

イラン核施設攻撃について分析する高橋和夫名誉教授イラン核施設攻撃について分析する高橋和夫名誉教授

米軍攻撃の背景とトランプ大統領の判断

トランプ大統領はこれまで大規模な軍事介入には消極的な姿勢を示してきましたが、今回の攻撃は核施設に限定されたものであり、米軍に死傷者が出るリスクが低いと判断した可能性があります。これにより、自身の支持層を説得しやすくなると考えたのかもしれません。特に、トランプ氏の強固な支持基盤であり、親イスラエルの立場をとるキリスト教右派にも配慮した側面があるでしょう。このように、様々な状況が重なり、限定的な軍事介入に踏み切るための条件が整ったタイミングだったと言えます。

イランの反応予測と今後の展開

トランプ大統領は、イランが和平に応じなければ更なる攻撃を加える可能性を示唆しています。しかし、米国がイランの体制そのものを転覆させようと狙っているとは考えにくく、これ以上の大規模な攻撃を強く望んでいるわけでもなさそうです。今回の攻撃は、脅威を与えることでイランに米国への報復を抑制させたいという意図が働いていると解釈できます。

一方のイランも、米国との全面的な衝突は避けたいはずです。過去には、2020年に米国がイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害した際、イランは事前にイラク国内の米軍基地への攻撃を通告し、米側に人的被害を出させない形で報復を「実行」したという事例があります。今回もイランが同様の戦略をとることで、事態をこれ以上エスカレートさせずに収束させる可能性は十分にあります。しかし、もしイランが核開発を続ける意思を崩さなければ、米国の攻撃が続き、紛争が長期化するリスクも否定できません。

世界経済への影響と国際社会の役割

もし状況がさらに悪化した場合、イランが原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖する可能性もゼロではありません。その場合、世界経済は計り知れない大打撃を受け、原油価格の急騰は避けられない事態となります。

このような状況において、日本を含む国際社会は、関係各国、特に米国、イスラエル、そしてイランに対し、最大限の自制を強く求めていく以外に事態を沈静化させる道はないでしょう。外交努力による緊張緩和が今最も求められています。


Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/6d49924c9970af4c04906a253ed828b2d10800b1