宮崎・鹿児島県境にある霧島連山・新燃岳が6月22日、約7年ぶりに噴火した。6月23日発売の『週刊エコノミスト』(7月1・8日合併号)に掲載した連載「鎌田浩毅の役に立つ地学」を紹介する。
日本有数の活火山である霧島火山の新燃岳(しんもえだけ)(宮崎・鹿児島県)は、2011年1月に大噴火を起こしている。この噴火は当初予測された規模を上回り、周辺で大きな被害が生じた。現在の新燃岳の活動は落ち着きつつはあるものの、依然として予断を許さない状況が続く。
当時の新燃岳の活動は10年3~7月の小規模な水蒸気爆発から始まった。11年1月19日から噴火が活発化し、1週間後の1月26日には189年ぶりのマグマ噴火が始まって、新燃岳の火口に溶岩が噴き出した。その後も噴火は爆発力を増し1月27日には噴石を吹き飛ばす爆発的噴火を起こした。
こうした噴火に伴い、風下に当たる山の東側では多量の火山灰と「火山れき」と呼ばれる小さな噴石が降り積もった。一方、火口の近くでは小規模の「火砕流」が発生していることも確認された。火砕流とは高温の火山ガスとともに時速60キロメートル以上の速度で火山灰や軽石などが斜面を下り落ちる危険な現象である。
2月1日には直径70センチメートルに及ぶ大きな噴石が、火口から3.2キロメートル地点にまで飛散した。さらに、火山の爆発に伴う衝撃波の「空振」(空気振動)によって、周辺の各地で窓ガラスが割れる被害が続出してけが人も出た。
噴火では地下深くから大量のマグマが上昇し、1~2月の噴火で出たマグマの量は鹿児島県の桜島が1年間に平均的に噴出するマグマの全量を超えていた。新燃岳頂上にある直径700メートル、深さ200メートルのすり鉢状の火口には、直径600メートル、高さ100メートルの溶岩が盛り上がった丘(溶岩ドーム)が形成された。
◇「享保」マグマと酷似
さらに、1日当たり約1万トンの有毒な二酸化硫黄ガスの放出が続いた。GPS(全地球測位システム)による地殻変動の観測では、新燃岳の北西の地下数キロメートルにあるマグマだまり付近でマグマ上昇の動きが捉えられ、新たに蓄積された高温のマグマの4分の3が噴出したことが分かった。