英国が核爆弾を搭載できる最新鋭戦闘爆撃機F-35Aの導入を決定しました。スターマー首相は6月24日に発表した声明で、核兵器搭載能力を持つF-35A戦闘機12機を購入すると明らかにし、これを「1世代ぶりに英国の核態勢を最も大きく強化するもの」と位置づけました。この計画は、同日始まった北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で発表される見込みです。
スターマー首相は、F-35Aの導入が「世界を先導する英国空軍の新たな時代を告げ、英国と同盟国を危険にさらす敵対的脅威を抑止するだろう」と強調しました。ヒーリー国防相も、今回のF-35A編隊導入は「他国の核兵器増強、現代化、多角化により、われわれが新たな核リスクに直面しているという判断に基づく決定」だと説明しています。
導入されるF-35Aの能力と配備の可能性
今回英国が導入する米ロッキード・マーチン製のF-35Aは、英国海軍がすでに空母船団で運用している短距離離陸・垂直着陸型のF-35Bとは異なる通常離着陸型の機種です。このF-35Aは、在来式武器に加え、米国の新型B61-12重力核爆弾を搭載できる能力を持ちます。
もしF-35A編隊が英国に導入され、核兵器が搭載されることになれば、2008年に在英米軍が核兵器を撤収して以来、17年ぶりに英国国内に米国の核兵器が再配備されることになります。核保有国である英国は現在、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)形態の核兵器のみを保有しており、米国、ロシア、中国などが多く保有する空中発射型核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)は保有していません。
在韓米軍基地でのF-35Bデモ飛行:英国が導入するF-35Aと同じシリーズの最新鋭戦闘機
国際的な反応と背景
NATOのルッテ事務総長は、英国のこの計画を「NATOに対する英国のまた別の強力な貢献」と評し、歓迎の意を示しました。フランス国際関係研究所(IFRI)のエロイーズ・ファイエ研究委員は、今回の英国の決定について「欧州の持続的な再核武装、核兵器に対する新しい需要、ライバルのロシアに対抗するNATOの抑止力強化」を示唆するものだと論評しています。タイムズ紙も、これを「ロシアと中国の核抑止力に対応するための極めて重要な動き」と解説しました。
英国は前日に発表した「国家安全保障戦略2025報告書」でも、ロシアの核脅威拡大と英国本土攻撃の可能性に対する備えを強く打ち出しています。同報告書では、「ロシアの侵略がわれわれの大陸を脅かし、敵対的な国家活動がわれわれの領土内で強行されている。われわれは戦時に英国本土が直接的脅威に直面する可能性に積極的に備えなければならない」と言及しており、今回のF-35A導入はその戦略の一環と考えられます。
まとめ
英国による核搭載可能型F-35A戦闘機12機の導入決定は、同国の核戦力強化とNATOの抑止力向上に向けた重要なステップです。これは、ロシアや中国など他国の核戦力増強と、それに伴う新たな国際的リスクへの対応として位置づけられています。F-35Aの導入は、英国の防衛能力を現代化するとともに、必要であれば米国製核兵器の再配備を可能にする可能性も秘めており、欧州における安全保障環境の変化を示す動きとして注目されます。
参考資料
- AFP通信
- ガーディアン
- タイムズ
- ニュース1