アメリカのトランプ前大統領は、日本時間25日午後1時ごろまでに、イランとイスラエルの戦争が正式に終わるとしている。その一方で、双方が攻撃を受けたと主張するなど、事態は依然として予断を許さない状況が続いている。
停戦合意の背景と展開
記者会見で中東停戦について語るトランプ前米大統領
今回のイランとイスラエルの間の停戦合意について、その舞台裏にはアメリカの主導があったとされる。ロイター通信の報道によると、この停戦はアメリカが提案したもので、カタールの仲介を経てイランに伝えられ、イラン側がこれに同意する形となった。イランへの提案に先立ち、トランプ前大統領はカタールに対し、「イスラエルが停戦に合意した」と伝えていたという。
この合意に基づけば、「戦争の終結」は以下のような流れで進むとされていた。日本時間24日午後1時ごろに停戦合意が発効し、まずイランが戦闘を停止。その12時間後の25日午前1時ごろにイスラエルが戦闘を停止し、同日午後1時ごろをもって正式な「戦争終結」を迎えるというタイムラインが設定されていた。
しかし、停戦合意の発効後も、イラン、イスラエル双方が互いに攻撃を受けたと主張する事態が発生している。これを受け、トランプ前大統領は記者団に対し、「両国とも合意に違反している。イスラエルは合意直後に大量の爆弾を投下した」と述べ、怒りをあらわにした。
その後、25日午前2時には、イランのペゼシュキアン大統領が「国民の勇敢な抵抗により12日間におよぶ戦闘が終結した」と表明したが、実際に停戦が厳守されるかどうかは依然として不透明な状況が続いている。
“恒久的な停戦”への道のり:核問題が焦点
イランとイスラエルの停戦合意に向けたプロセス図
仮に一時的な停戦が維持されたとして、それが恒久的な和平につながるのかが今後の大きな焦点となる。恒久的な停戦に至るために今後考えられるスケジュールは以下の通りだ。
- IAEA(国際原子力機関)による査察
- イランが核施設を廃棄
- 西側諸国が対イラン経済制裁を解除
- イランが恒久的な停戦に合意
- イスラエルが恒久的な停戦に合意
つまり、このプロセスにおける最初の、そして最も重要な条件の一つが、イランによる核施設の廃棄だ。
恒久停戦の焦点となるイランの核関連施設
このイランの核開発を巡っては、予断を許さない情報も浮上している。イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は、今後イランが体制の存続をかけて核兵器を使用する可能性を指摘した。IAEAの報告によると、先月17日時点でイランは60%まで濃縮されたウランを約400キロ保有しており、これはさらに高レベルに濃縮する技術があれば核爆弾9発に相当する量だとされる。万が一、これが兵器として使用されることになれば、地域、そして世界に甚大な被害をもたらすことが予想される。
さらに、ロシアのメドベージェフ前大統領は22日、「いくつもの国がイランに核兵器を渡す用意がある」と主張しており、イランの核問題を巡る情勢は、停戦の試みがなされる中でも、依然として不安定な要素を抱えているとの見方が強い。
結論として、トランプ前大統領による「戦争終結」の宣言があったものの、停戦後の相互攻撃の主張や、恒久的な和平の前提となるイランの核問題という大きな課題が横たわっており、中東情勢の混迷は今後も続くとみられる。
参考文献:
- ロイター通信 (Reuters)
- フィナンシャル・タイムズ (Financial Times)
- 国際原子力機関 (IAEA) 報告
- トランプ前米大統領 記者会見発言
- イラン ペゼシュキアン大統領 発言
- ロシア メドベージェフ前大統領 発言