ドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名等略)は、6月22日(日本時間)、3カ所のイラン核濃縮施設攻撃に踏み切った。20日、同国に対して、2週間以内に攻撃をするか決定を下すと発表しておきながら、その2日後に軍事行動に出た。
それは、このところ指摘されているTACO(タコ Trump Always Chickens Out:トランプはいつもおじけづいて身を引く)」というイメージを払拭し、断固たる決断ができる「強いリーダー」を演出したかったのだろう。
しかし、トランプの熱狂的なMAGA(マガ Make America Great Again:米国を再び偉大にする)支持者や、米国民の半数近くは、トランプのイラン核施設空爆を支持していない。以下では、MAGA支持者の声と空爆に関する最新の世論調査結果を紹介し、その上で、イラン核施設攻撃後のトランプの「力による平和」の意味について述べる。
MAGA支持者の声―少数派のスミス氏
ジャック・スミス氏(仮名)は、米大手製薬会社を退職し、現在、中西部インディアナ州インディアナポリスに住んでいる。スミスは、今年2月、MAGAたちが集まった保守派の年次大会「CPAC(シーパック 保守政治行動会議)2025」に参加した。そのCPAC大会において、筆者が行動を共にした人物の1人である。彼にトランプのイラン核施設攻撃について聞いてみた。
スミスは、まず「米国がイランに対し軍事行動をとらないようにと願っていました。トランプは大統領として素晴らしい仕事をしてきたからです。イスラエルはイランにすでにかなりのダメージを与えていました」と答えた。彼は、イラン核施設攻撃は不必要であったと考えている。
また、スミスは「仮にイランを攻撃するならば、多国籍軍による攻撃を望んでいました」とも語った。今回のような単独の軍事力行使に否定的な立場をとっている。
さらに、スミスは「今後、米国内でテロが発生したら、民主党や左派は、イランを攻撃したトランプを批判するでしょう。イスラエルと米国によるイランへの武力行使が、世界大戦に発展したら、彼らは明らかにトランプを批判します」と加えた。彼は、トランプのイラン核施設攻撃が、近い将来、民主党と左派の攻撃材料になることを懸念している。
後述するように、彼の意見はMAGAの中では少数派である。しかし、MAGAたちの日常のネットワークから推すと、彼の考えもある程度、仲間内では共有されている可能性は充分ある。