物価高騰が国民生活を圧迫する中、立憲民主党は食料品にかかる消費税率をゼロにする法案を衆議院に提出しました。この「食料品消費税ゼロ法案」は、家計負担の軽減を目指す画期的な政策として注目を集めていますが、同時に、かつて消費税率引き上げを主導した野田佳彦元首相(68)の存在が、国民の間で大きな議論と反発を巻き起こしています。
「食料品消費税ゼロ法案」の概要と立憲民主党の決意
10月31日、立憲民主党が提出したこの法案は、来年10月1日から1年間、飲食料品への消費税率をゼロに引き下げることを提案しています。物価や景気の状況によっては、さらに1年間の延長も視野に入れています。法案では、財源として国債に頼らず、政府の基金の取り崩しや外国為替資金特別会計を活用すると明記されており、現実的な財政措置を講じる意向を示しています。
法案提出の前日、立憲民主党の野田佳彦代表は自身のX(旧Twitter)を更新し、高騰する食料品価格に警鐘を鳴らし、「食卓の危機」と表現しました。そして、「食料品消費税ゼロ法案」の国会提出を宣言し、与野党を超えた理解と賛同を呼びかける強い決意を表明しました。さらに、ガソリン税の暫定税率廃止が年内実施の視野に入ってきたことに触れ、野党連携の成果として、生活者の実感に結びつく政策実現への意欲を示しました。
立憲民主党の野田佳彦元首相が記者会見で発言する様子。食料品消費税ゼロ法案提出や増税に関する議論の焦点となる人物。
「増税の張本人」という批判の嵐:国民の声
しかし、野田氏のXへの投稿には1000件以上のコメントが寄せられ、その多くは厳しい批判の声でした。ユーザーからは「消費増税した張本人が消費減税を訴える?」「あなたが総理大臣の頃に消費税増税した張本人でしょ!今更どの口が言ってるのですか?」「まず、消費税増税はあなたがやった。(しかもマニフェストに反して)」といった指摘が相次ぎ、「そもそも増税したのはあなたではないか」という強い不信感が浮き彫りになりました。
野田元首相と消費税増税の歴史的背景
実際、2012年の旧民主党政権下で消費税率を8%、さらに10%へと引き上げる決定を下したのは、当時の野田首相でした。ある全国紙の政治部記者は、その経緯について次のように語っています。「野田氏は民主・自民・公明の三党合意による社会保障と税の一体改革の中で、『将来世代にツケを回してはいけない』という強い信念のもと、党の分裂を招きながらも増税に踏み切りました。」
この増税決定後に行われた解散総選挙では、民主党が前回の308議席から57議席へと大きく議席を減らすという歴史的な惨敗を喫しました。これは、当時の国民が抱いていた反発がいかに大きかったかを示すものであり、野田氏が強力なリーダーシップで主導した増税からの減税への方針転換は、党内でも少なからず反発があったと伝えられています。
「反省」表明も拭えない国民の不信感
一方で、野田氏は当時を振り返り、今年の記者会見では増税に対する「反省」も表明しています。「私は社会保障と税の一体改革を推進した最終責任者だ」と自身の責任を受け止めた上で、「将来世代をおもんぱかる政治を進めたが、今を生きる人たちの暮らしも大事だ」と述べ、方針転換への理解を求めました。しかし、前出の政治部記者は、「当時を知る国民からすれば、『今さら言うのか』との声が出ても仕方がないかもしれませんね」と、依然として根強い国民の不信感を指摘しています。
結論
立憲民主党が提出した「食料品消費税ゼロ法案」は、物価高に苦しむ国民にとって切実な政策提案です。しかし、過去に消費税増税を主導した野田佳彦元首相が、今回その減税を訴える立場にいることで、国民の間には複雑な感情と根深い不信感が広がっています。この法案が国会でどのような議論を呼び、国民の支持を得られるかは、立憲民主党が過去の経緯と現在の政策をいかに整合させ、説得力を持って提示できるかにかかっています。





