ある漫画作品をきっかけに、「2025年7月5日に日本で大きな災難、特に大津波が発生する」といった情報がインターネット上で拡散され、人々の間で不安が広がっています。果たして、このような特定の日時や場所、規模を予言することは科学的に可能なのでしょうか?また、現在も地震が頻発しているトカラ列島近海の活動とこの「7月5日予言」に関連性はあるのでしょうか。本記事では、気象庁の公式見解および元気象庁長官の専門家の視点から、この予言情報の真偽と背景について詳しく解説します。
漫画『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社刊)の著者であるたつき諒氏は、作中で2025年7月5日に起こりうる出来事として、「日本とフィリピンの中間あたりの海底がボコンと破裂(噴火)」し、それに伴い「太平洋周辺の国に大津波が押し寄せ」、その津波の高さが東日本大震災時の3倍にも達すると描写しています。
元・気象庁長官である西出則武氏は、この漫画内の描写、特に「海底がボコンと破裂」という現象について「具体的に何を指すかは専門家にも分からない」と前置きしつつも、台湾からフィリピン東側にかけてはプレート境界が存在し、過去にも大規模なプレート境界型地震が発生している地域であり、「大きな地震が起こる可能性は当然ある」と科学的な視点から説明しています。
「7月5日大災難予言」に関する記事のイメージ
専門家が見る地震予測とデマ拡散の問題
現在も活動が続くトカラ列島近海での地震頻発について、西出氏は「しばらくは地震活動が続く可能性が高い」との見解を示し、特定の期日である7月5日までに活動が収まるかどうかは不明であるとしています。また、過去には悪石島で震度5強の地震も観測されていることに触れつつ、7月5日に特別に大きな地震が発生するかどうかについても「分からない」と述べています。
情報が不確かな形で拡散されてしまっている状況に対して、西出氏は漫画著者のたつき氏自身が「これは予言や予知ではない」と明確に否定している点を指摘しました。その上で、「正確な情報を確認せずに、面白おかしく“尾ひれ”をつけて拡散してしまうと、結果的にそれはデマになってしまう」と強く警告。「今の状況は、おそらく作者の本意ではないだろう」と述べ、情報の受け手に対して情報の真偽を慎重に確認し、冷静に判断することの重要性を改めて強調しました。
トカラ列島近海における地震活動のデータ図
気象庁の公式見解:特定の日時・場所・規模の予知は不可能
気象庁の野村長官は、2024年6月13日の定例会見において、地震予知に関する科学的な現状について言及しました。野村長官は、「現在の科学的知見をもってしても、地震の発生日時、場所、規模を特定した予知は不可能」であると断言。そして、インターネット上で拡散されている「7月5日の大災難予言」のような情報は「科学的な根拠がなく、デマであると考えられる」と明確に否定しました。さらに、「そのような情報によって過度に心配したり、不安になったりする必要は一切ない」と国民に対して冷静な対応を強く呼びかけています。
鹿児島県悪石島の周辺空撮イメージ
この気象庁長官の踏み込んだ発言について、西出氏は「かなり明確な回答」だと評価しました。作者の意図がどうであれ、結果として多くの人が誤った情報として受け取ってしまう状況を鑑み、「デマである」と断言したのだろうと分析しています。ただし、これは地震が多い日本において「地震のことを全く考えなくていい」という意味では断じてなく、「不確かな情報に過剰に反応すること自体が間違っている」という注意喚起のメッセージが込められていると解説しました。
結論として、漫画を基にした「7月5日の大災難予言」は、気象庁や専門家によって科学的根拠に基づかないデマ情報であるとされています。特定の日の災害発生を断定する情報は現在の科学では不可能であり、不確かな情報に惑わされず、公的機関や信頼できる専門家の発信する正確な情報に基づき、冷静に行動することが重要です。
参考資料:
https://news.yahoo.co.jp/articles/2760e1ba22d74cf923d24ecdf91a9ae2e869e1f5