最低賃金上昇で「106万円の壁」超え、働き損を防ぐ手取りのリアルを解説

近年、最低賃金が継続的に引き上げられている影響で、これまでと変わらない働き方をしていても、意図せず「106万円の壁」を超えてしまうパートやアルバイトの方が増加しています。手取り収入の減少は避けたいものの、仕事量を減らすわけにもいかない――。そんな「働き損」とも感じられる状況を避けるためには、どれくらいの収入を目指すべきなのでしょうか。本記事では、年収と手取りの具体的な関係性を分かりやすく解説し、賢い働き方を考えるための情報を提供します。

最低賃金引き上げと「106万円の壁」の現状

全国的に最低賃金の引き上げが続き、2024年度の全国加重平均はついに1055円に達しました。特に主要都市では、すでに時給1100円を超える地域も現れています。これにより、これまで年収106万円以下に抑えていたパートやアルバイトの多くが、同じ労働時間でもこの「106万円の壁」を超過する事態に直面しています。

2025年現在、この「106万円の壁」とは、主に社会保険料(厚生年金保険・健康保険)の本人負担が発生し始める年収ラインを指します。具体的には、従業員51人以上の企業など、特定の要件を満たす職場で「週20時間以上勤務」「所定内賃金が月額8万8000円(年収約106万円)以上」などの条件に該当する方が、社会保険への加入義務の対象となります。政府は最低賃金上昇を見据え、「106万円の壁」の撤廃や見直しを検討していますが、すでにこの壁を超えてしまった方々の悩みは喫緊の課題となっています。

「106万円の壁」を超えた際の手取りと社会保険のメリット・デメリット

「106万円の壁」を超過し、社会保険への加入条件を満たした場合、ご自身で社会保険料の負担が生じます。これにより、厚生年金保険料と健康保険料の自己負担分が給与から差し引かれるため、年収が106万円を超えると、手取り額が大幅に減少する可能性があります。

政府広報オンラインの解説によると、「106万円の壁」手前では社会保険料の負担がなかった場合でも、年収が106万円に達すると、一般的なケースでは年額で「約16万円」の社会保険料負担が発生するとされています。このため、収入が増えたにもかかわらず手取りが減るという「働き損」と感じる現象が起こりやすく、これが多くのパート労働者の悩みの種となっています。

一方で、社会保険に加入することには大きなメリットも存在します。厚生年金保険に加入することで、将来受け取れる年金額が、自営業者や国民年金のみに加入している人よりも増える可能性があります。また、健康保険に加入することで、病気や怪我の際の医療費負担が軽減されるだけでなく、出産手当金や傷病手当金といった各種給付金が手厚くなる保障も受けられます。これらのメリットは、短期的な手取りの減少と引き換えに、長期的な生活保障と安心をもたらすものです。

電卓と硬貨を前に、年収と社会保険料について考えるパートタイマーの女性電卓と硬貨を前に、年収と社会保険料について考えるパートタイマーの女性

まとめ:賢い働き方で「働き損」を回避する

最低賃金の上昇に伴う「106万円の壁」の課題は、多くのパートタイマーにとって現実的な問題となっています。手取りが一時的に減ることを「働き損」と感じるかもしれませんが、社会保険への加入は将来の年金受給額の増加や、健康保険による手厚い保障といった長期的なメリットも提供します。自身のライフプランや将来設計を踏まえ、短期的な手取りの変動だけでなく、長期的な視点から社会保険加入のメリットも考慮に入れることが、賢い働き方を選択するための重要な鍵となります。


参考文献

  • 政府広報オンライン「106万円の壁」解説記事(具体的なURLは記事に明記されていないため、政府広報オンラインの関連情報として記載)
  • 金融庁 金融広報中央委員会(知るぽると)社会保険制度に関する情報
  • 厚生労働省 最低賃金に関する情報