社会保険料はどう変わる? 7月の見直しと厚生年金「標準報酬月額」上限引き上げ

今日から7月。会社員の給与明細に記載されている社会保険料は、実はこの時期に重要な見直しが行われることをご存じでしょうか。「標準報酬月額」と呼ばれるものが、毎年7月に決定され、その後の保険料や将来受け取る年金額に影響を与えます。さらに、先月6月13日には、この制度に関連する法律が成立し、「標準報酬月額」の上限額が段階的に引き上げられることが決まりました。これにより、「誰がどのように影響を受けるのか」について詳しく解説します。

社会保険料の「定時決定」とは? 毎年7月の仕組みを解説

会社員が負担する社会保険料は、標準報酬月額に基づいて計算されます。この標準報酬月額は、原則として毎年一度、7月に見直されます。具体的には、毎年7月1日現在で会社に勤めている全ての被保険者を対象に、その年の4月から6月までの3ヶ月間に支払われた給与(報酬)の平均額を算出し、これを基に標準報酬月額が決定されます。この一連の見直し作業を「定時決定」と呼びます。

定時決定によって決められた標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月までの1年間、適用されます。この期間中、特別な事情がない限り、給与明細に記載される社会保険料はこの標準報酬月額を基に計算された金額となります。ただし、年の途中で大幅な昇給や降給があった場合、または育児休業や産前産後休業から復帰した場合など、特定の条件を満たす際には、「随時改定」として臨時に標準報酬月額が見直されることもあります。この定時決定は、会社員にとってその1年間の社会保険料負担額を決定する重要な手続きとなります。

給与明細を確認する会社員、社会保険料と標準報酬月額の見直し給与明細を確認する会社員、社会保険料と標準報酬月額の見直し

厚生年金「標準報酬月額」の上限引き上げ:誰がどう影響される?

現在の標準報酬月額は、最低等級の8万8000円から最高等級の65万円まで、全部で32等級に区分されています。厚生年金保険と健康保険、それぞれの標準報酬月額の分布を見ると、多くの被保険者が集中する「ボリュームゾーン」は30万円前後の等級にあります。これは両保険制度に共通しています。

しかし、厚生年金と健康保険では、標準報酬月額の上限に大きな違いがあります。厚生年金の上限は現在65万円ですが、健康保険は139万円まで設定されており、より高額な報酬を正確に反映できる仕組みになっています。この差により、厚生年金においては、報酬が65万円を超える高所得者層の場合、実際の報酬がいくら高くても一律に65万円とみなされてしまうため、保険料や将来の年金額が実際の収入を十分に反映しないという状況が生じていました。

こうした実態を踏まえ、先日6月に成立した法律により、厚生年金における標準報酬月額の上限を段階的に引き上げることが決定されました。この上限引き上げは、主に現在の標準報酬月額が65万円を超えている、あるいは近い高所得者層に影響を与えます。厚生労働省の資料によると、現在の厚生年金被保険者(男性)のうち、標準報酬月額が65万円以上の割合は約9.6%、人数にして約243万人に上るとされています。上限が引き上げられることで、これらの層はより高い標準報酬月額が適用されるようになり、結果として社会保険料(厚生年金保険料)の負担が増加することになります。ただし、それに伴い将来受け取る年金額も増える可能性があります。

まとめ

毎年7月に行われる社会保険料の「定時決定」は、その後の1年間の保険料負担を左右する重要な手続きです。給与明細で確認できる「標準報酬月額」は、この定時決定によって見直されます。そして、この度成立した法律により、厚生年金保険の「標準報酬月額」の上限が引き上げられることが決まりました。これは、特に高所得者層の社会保険料負担に影響を及ぼす変更であり、今後の給与や年金額にも関わるため、自身の標準報酬月額や制度変更について関心を持つことが重要です。