昨今のパチンコ・パチスロ遊技機では、人気コンテンツを題材にしたものが数多く登場していますが、中でも際立って多いのがアニメ作品をモチーフにした台です。パチンコ・パチスロメーカーのサミーは、アニメファン向けに遊技機の楽しみ方を伝えるサイト『サミ推し』を2024年6月20日に公開しました。このサイトでは、初心者向け情報に加え、2024年7月7日導入予定のパチンコ機『e東京リベンジャーズ』を特集し、出演声優とのコラボ企画なども展開しています。遊技人口の減少が続くパチンコ・パチスロ業界にとって、人気コンテンツを遊技機に取り込むことで、その作品のファンを新たなユーザーとして獲得することは重要な戦略です。題材となるコンテンツの人気や注目度が高ければ高いほど、新規ユーザー獲得への期待も大きくなります。パチンコ・パチスロに詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏は、特にパチンコ・パチスロにおいては、実写コンテンツよりも二次元コンテンツ(アニメや漫画など)が人気だと指摘しています。
人気アニメのキャラクターが表示されたパチンコ・パチスロ遊技機イメージ
二次元コンテンツが遊技機の主流である現状
もちろん、実写のドラマや映画、人気歌手とのタイアップを題材にした遊技機も存在します。しかし、現状ではアニメ作品、あるいは漫画などの「二次元コンテンツ」を扱った遊技機が圧倒的に多数を占めています。確かに、2012年に大ヒットした『CRぱちんこAKB48』や、特撮シリーズの『牙狼』など、実写系の人気機種も過去にはありましたが、全体から見ればこれは比較的レアなケースと言えます。多くのパチンコ・パチスロメーカーが、新機種開発の中心として二次元コンテンツを選んでいます。藤井氏によれば、この傾向にはいくつかの明確な理由がありますが、その最大の理由は「映像制作のハードルの低さ」にあると言います。
遊技機向け新規映像制作の容易さ
現在のパチンコ・パチスロ遊技機は、大型の液晶画面を備えているものが多く、その画面上で展開される様々な映像による「演出」が、機種の人気を左右する非常に重要な要素となっています。ユーザーをいかに引きつけ、楽しませる映像を作り込むかが鍵となりますが、実写のドラマや映画を題材にする場合、遊技機特有の演出のために新規映像を撮影することが容易ではないという実情があります。一方、アニメ作品であれば、このような新規映像作成におけるハードルは実写に比べて低いのです。
藤井氏は、「パチンコ・パチスロの映像は特殊であり、必ずしも原作のアニメ作品とは直接関係のない、遊技機独自の場面が登場することも頻繁にあります。実写コンテンツの場合、こうしたパチンコ・パチスロ専用の特別なシーンを撮影するために、出演キャストを再度集めて追加撮影を行うのは非常に難しい。また、パチンコ・パチスロ機への登場を快く思わない俳優さんやタレントさんが一定数いるのも事実です。そういった状況下で、二次元コンテンツは新規の映像を作りやすく、既存の素材としても加工しやすいのです」と説明します。
バトル演出との高い親和性
さらに、現在のパチンコ・パチスロ遊技機では、「バトル演出」が非常に多く採用されています。これは、例えば「味方キャラクターと敵キャラクターが戦い、味方が勝利すれば大当たり」といったように、結果が期待感を煽る演出形式です。アニメ作品には、このような戦闘や対決の要素を含むものが多いため、バトル演出を作りやすいという事情もあります。
藤井氏は、「あまりバトルの要素を含まないコンテンツを遊技機の題材にしてしまうと、大当たりへと繋がるリーチ映像などが、原作の世界観からかなりかけ離れた、不自然な形になってしまうことも珍しくありません。例えば、タレントさんを題材にした機種では、そもそも戦うような要素が皆無なため、リーチ演出が極めて突飛なものになりがちです。ユーザーとしても、演出に正当性のある、無理のないバトル演出でなければ、なかなか感情移入したり、のめり込んだりすることが難しい。バトル展開が不自然になりにくい作品が多いという意味で、二次元コンテンツが遊技機の題材として選ばれやすいと言えるでしょう」と述べています。関連の記事《アニメとの親和性が深化するパチンコ・パチスロ業界 遊技機の題材になることを前提としてアニメ化のプロジェクトが動くケースも》では、藤井氏が「実写化作品」ではなく「アニメ」の方がパチンコ・パチスロとの親和性が高い、より詳細な事情について解説しています。