災害が発生した際、生存に不可欠な要素としてまず挙げられるのが「水」です。内閣府のガイドラインでもその重要性が示されており、成人が1日に必要とする飲用水は約3リットルとされています。この量は、1週間分で計算すると1人あたり約21リットルにもなります。東日本大震災を仙台で経験されたアナウンサーの奥村奈津美氏も、食料よりも水の備蓄の優先順位が高いと指摘しています。この記事では、大切な家族の命を守るために、必要な水の備蓄量や、水道水、ミネラルウォーター、長期保存水といった水の種類に応じた賢い保存方法について詳しく解説します。
災害時に本当に必要なのは「水」
地震や台風などの大規模災害が発生した場合、ライフラインの中でも特に復旧に時間がかかる可能性が高いのが水道です。断水が発生すると、飲み水はもちろん、調理や衛生に関わる生活用水も確保が困難になります。食料は数日間なら蓄えや代替手段がありますが、水分は短時間で補給が必要であり、脱水症状は命に関わります。そのため、「おうち防災」においては、食料よりもまず水の備蓄を最優先することが推奨されています。
1人あたり1週間で約21リットル?必要な備蓄量
内閣府の推奨する成人の飲用水の備蓄量は「1日3リットル」。これを最低限の目安とし、家族の人数分×7日分を用意することが基本です。例えば4人家族なら、3リットル×7日×4人=84リットルが必要になります。
特に注意したいのは、子どもに必要な水分量です。子どもは大人に比べて体内の水分量が占める割合が多く、体重あたりの必要水分量は成人よりも多くなります。小学生で約1.5倍、幼児で約2倍、乳児では約3倍にもなると言われています。ただし、これは食事などから摂取する水分も含めた全体量であり、すべてを飲み水として備蓄する必要はありません。しかし、災害時に脱水にならないよう、十分な水分補給ができる量を想定して備蓄量を検討することが重要です。特にマンションの高層階など、水を運ぶことが困難な場合は、多めに備蓄しておくことが賢明です。
賢く水を備蓄する3つの方法
水の備蓄方法にはいくつか選択肢があります。それぞれの特徴を理解し、家庭の状況に合った方法で備えを進めましょう。
1. 手軽にできる「水道水」の活用
最も手軽に水を備蓄する方法の一つが、普段使っている水道水を活用することです。費用も水道料金以外にかかりません。清潔なペットボトルやポリタンクなどの容器を用意し、水道水を蛇口から直接満タンになるまで入れます。
賞味期限切れの水について説明する画像
東京都水道局によると、水道水は塩素による消毒効果があるため、直射日光を避けて常温保存で3日程度、冷蔵庫で保存すれば10日程度保存が可能とされています。保存開始日をメモしておき、期限が近づいたら生活用水として使用し、新たな水道水を入れ替える「ローリングストック」の考え方で備蓄を維持します。浄水器を通したり、一度沸かしたりすると塩素が除去されてしまうため、必ず蛇口から直接注ぐようにしましょう。
また、戸建住宅などのリフォーム時に設置できる水道管直結型の給水タンクは、自動的に水道水を備蓄してくれるフェーズフリーな備蓄方法として注目されています。
2. 普段から使える「ミネラルウォーター」
市販されているペットボトルやウォーターサーバーの水を備蓄として活用する方法です。入れ替えの手間が省け、普段から飲み水や調理用水として利用できるため、無駄なく循環備蓄(ローリングストック)が可能です。
国産のミネラルウォーターの賞味期限は一般的に1年~2年程度ですが、日常的に消費しながら買い足していくことで、常に一定量を確保することができます。
非常用セットに含まれるペットボトル水の重要性を示す画像
3. 管理が楽な「長期保存水」
より長期間の保存を目的とする場合は、長期保存水が適しています。一般的なミネラルウォーターよりもはるかに長く、5年、7年、中には12年といった賞味期限を持つものもあります。
特に、リサイクル率が高く環境負荷の少ないアルミ缶入りの長期保存水は、高い密封性と遮光性により品質が劣化しにくいため、長期間の保存に向いています。賞味期限が長いため、入れ替え作業の頻度を減らすことができ、管理の手間を大幅に軽減できるのがメリットです。
備蓄の準備を始めよう
災害はいつ発生するか予測できません。家族の命と健康を守るために、まずは必要最低限の水の備蓄から始めることが大切です。内閣府のガイドラインを参考に、家族構成に応じた量を算出し、水道水の活用、ミネラルウォーターの循環備蓄、長期保存水の導入など、ご家庭に合った方法で計画的に水の備蓄を進めましょう。水の備蓄は、「おうち防災」の第一歩であり、最も重要なステップです。
出典: https://news.yahoo.co.jp/articles/aab02f82eae34e3751a7a642e7cc23ad97543345