露、個人を「外国代理人」指定へ 言論統制強化の一環か


 【モスクワ=小野田雄一】ロシアで2日、外国の主張を代弁する「外国代理人」に個人を指定することを可能にする改正マスコミ法が施行された。従来、外国代理人の指定は国外資本で運営される非営利系メディアなどの団体に限定されていた。外国代理人に指定された場合、会計報告を当局に届け出る義務などが生じ、違反者には罰金が科せられる。政権に批判的なインターネット利用者らが指定対象になる可能性もあり、ロシアでは露政府が強める言論への圧力の一環だとの懸念が広がっている。

 同法の規定では、(1)外国代理人に指定されている団体が作成した情報の流布に関与する(2)国外企業や国外資本の入った企業から報酬を受け取る-との2つの要件を満たす個人は外国代理人の指定対象となり、当局側に会計報告の提出などが義務付けられる。違反には最大10万ルーブル(約17万円)の罰金が科される。

 現時点では、同法がどの程度の範囲にまで適用されるかは明白ではない。

 露下院情報政策委員会のレビン委員長は、既に外国代理人に指定されている米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)などの組織で働くロシア人らが対象になる可能性があるとする一方、VOAなどの情報を拡散しているブロガーやユーチューバーでも、報酬を受け取っていなければ指定対象外だとの認識を示す。法案提出者の一人、クリモフ上院議員も指定対象は20~30人程度にとどまるとの見通しを述べている。

 ただ、ネット上の反政権機運が高まる中で露政府は言論統制を強めており、今回の法改正もその一環だとの懸念が強い。実際、露政府が今年施行した「政権への不敬」や「フェイクニュース」を禁じる法律も、違反の定義があいまいで、当局側による批判勢力の恣意(しい)的な摘発に利用されているとの指摘が出ている。

 露経済紙ベドモスチは法改正について「外国メディアの情報の遮断につながる」と批判。リベラル紙ノーバヤ・ガゼータも「政権に批判的なネット利用者の広告収入を当局側が『外国からの報酬』と恣意的に認定し、活動を制限することもできる」と懸念した。



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