伊東市長 田久保真紀氏の学歴疑惑と辞職・再出馬表明:記者会見に見る「違和感」

静岡県伊東市の田久保真紀市長の学歴詐称疑惑が波紋を広げている。田久保市長は、この疑惑を受けて一旦辞職し、改めて行われる市長選挙に立候補する考えを明らかにしている。元東洋大研究助手で、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は、今回の疑惑が特に注目を集める背景について、「東洋大は知名度が高いものの、超高偏差値ではない『絶妙な立ち位置』にある。そうした大学の卒業にまつわる『疑惑』だからこそ、耳目を集めているのではないか」との見解を示している。

辞職・再出馬の意向表明と不可解な記者会見

田久保市長は7月7日に記者会見を開き、一連の学歴疑惑について釈明するとともに、市長を辞職した上で再選挙に立候補する意向を表明した。これまでの報道で、市長は東洋大学を「卒業」したとしていたが、実際には「除籍」となっていたことが判明している。にもかかわらず、記者会見で田久保市長は「卒業証書」を持っていると繰り返し述べた。

この記者会見を見た多くの人が、言葉が通じないような、「暖簾に腕押し」あるいは「不気味」な脱力感を覚えたという。疑惑への明確な説明が避けられ、話がどこか噛み合わない印象を拭えなかったのだ。

指摘されている具体的な疑惑の内容

田久保市長に対して指摘されている「疑惑」は複数ある。その発端となったのは、選挙前の新聞やテレビ各社からの取材に対し「東洋大学卒業」と答えていたとされる「学歴詐称疑惑」だ。しかし、その後の調査で大学からは「除籍」であったことが確認されている。

さらに、当選後に伊東市の広報誌に「東洋大学卒業」と記載したことに対しては、虚偽公文書作成疑惑も報じられている。これらの疑惑に対し、市民やメディアは市長からの真摯な説明を求めている状況だ。

伊東市の田久保真紀市長、学歴疑惑に関する記者会見で説明(2025年7月7日)伊東市の田久保真紀市長、学歴疑惑に関する記者会見で説明(2025年7月7日)

捜査機関への委ねが招く「噛み合わなさ」

しかし、今回の記者会見で田久保市長は、こうした具体的な数々の疑惑内容に正面から答えることを避けた。代わりに、「きちんと捜査機関のほうにすべてお調べいただいて、その結果を見ることが一番、真実に近いかたちを市民のみなさんにお示しできる」と述べるにとどまった。

「卒業証書」が本物であると主張するならば、その証拠を自ら示すことが最も直接的かつ迅速な方法だろう。大学に問い合わせれば、卒業の事実はすぐに確認できるはずだ。それができない、あるいはしないという姿勢は、多くの疑問を生む。

さらに、市長は、市内の男性から刑事告発を受けている警察ではなく、静岡地方検察庁に委ねると述べた。告発されていない側の捜査機関に書類を出すという対応は、多くの人にとって理解しがたい行動であり、記者会見全体を通じて、質問と回答がすれ違うような、どこまでも話が噛み合わない印象を強める結果となった。

今後の展開

田久保市長は辞職し、再選挙への出馬を表明した。今後は、市長が委ねるとした捜査機関による捜査の行方と、再選挙の結果が注目される。一連の学歴疑惑と市長の対応は、地方自治における信頼性のあり方や、政治家の説明責任について改めて問いを投げかけている。

出典: Yahooニュース (President Online掲載)