職場で「すみません」を言えない人が増えている。ミスを指摘されると「先輩だってミスしたことあるじゃないですか!」と逆ギレする若手社員。謝罪どころか攻撃的な反応を示す部下に、管理職は困惑している。なぜ当たり前の謝罪ができないのか。その背景には、自信のなさ、比較意識、認知能力の問題など、複雑な心理的要因が隠されていた。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
● 度重なるミスを指摘されるとムッとしてキレる
自分がミスをして迷惑をかけたら、「すみません」「申し訳ありません」などと謝るものだが、最近はけっして謝らない人物がいて困るといった管理職や経営者の嘆きを聞くことが多い。なぜ謝らないのだろうか。それには世の中の風潮も影響しているかもしれないが、本人の性格や能力の問題も深く関係している。
仕事上のミスが多く、何度注意しても同じようなミスを繰り返す。仕事上のミスを放置するわけにはいかないので、その都度指摘してやり直してもらうしかないのだが、注意するたびにムッとした表情を見せ、「すみません」という謝罪の言葉もない。
ムッとするのはそっちじゃないだろうと言いたくなるのを、何かにつけてハラスメントとか言われるため、グッとこらえているが、こんな感じなので注意するのも気が重い。反省しないから、またミスを繰り返す。向こうがミスを繰り返しているのに、まるでこっちが悪いみたいな雰囲気になるから、注意するたびに後味が悪い。
このように、ミスを注意されるとムッとした感じになり、謝罪の言葉がないだけでなく、攻撃的な反応を示す若手がいて困るといった声をよく耳にする。
自分がミスをしたのに、謝罪しないどころか、自分のことを棚に上げて、人のことを糾弾するような口調で問いただしてきたので、さすがに腹が立ったという経営者もいる。その人は、職場で周囲の仲間たちを苛立たせている若手従業員について、つぎのようにボヤくのだった。