ドナルド・トランプ前米大統領が最近、ホワイトハウスにアフリカ5カ国の首脳を招いて会談した際の発言が、アフリカ各国で強い反発を招いています。特に、リベリア大統領への英語に関するコメントが「蔑視だ」との声を生んでいます。これは米CNNが報じたものです。
会談での発言とその背景
会談中、トランプ氏はリベリアのジョセフ・ボアカイ大統領の発言を聞き、「いい英語だ。美しい」と称賛しました。続けて、「そんな美しい英語をどこで学んだんだ?」と問いかけました。
これに対し、ボアカイ大統領はリベリアが米国の解放奴隷によって建国され、公用語が英語である点を説明しました。これはリベリア国民にとって当然のことです。この説明を聞いたトランプ氏は、「興味深い。このテーブルには私と同じぐらいうまく英語を話せる人がいないからな」と述べたと報じられています。
トランプ氏はかねてより「アメリカ・ファースト」の政策の一環として英語の重要性を強調しており、今年3月には連邦政府における英語を公用語とする大統領令を発しています。過去には、ドイツのメルケル首相の英語を称賛したこともあります。
アフリカ各国の強い反発
トランプ氏のこの発言が伝わるにつれて、アフリカ各国から強い反発の声が上がりました。リベリアの活動家アーチー・タメル・ハリス氏はCNNに対し、「われわれは英語圏だ。アフリカ人は教育を受けていない村人だと見ているのか」と述べ、不快感をあらわにしました。同国の外交官も「見下している」との見方を示しました。南アフリカのある政治家は、X(旧ツイッター)に「ボアカイ氏が(侮辱を感じて)部屋を出ていくのを止めることはできないだろう」と投稿し、発言への批判を強めました。
過去の不適切な発言との関連
アフリカ側からの反発がこれほど強い背景には、過去におけるトランプ氏のアフリカに対する言動が影響しています。例えば、2018年にはアフリカからの移民について「肥溜めの国から来た」と侮辱的な発言をしました。また、今年5月には南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領に対し、「白人の農民が虐殺されている」と主張する際に、実際とは全く異なる動画や画像を示すなど、誤った情報に基づく発言もありました。こうした過去の事例から、今回の発言はアフリカ全体を見下すものとして受け止められています。
事態収拾への試み
こうしたアフリカ側の反発を受け、トランプ氏の陣営からは事態を収拾しようとする動きも見られます。トランプ氏のアフリカ担当上級顧問であるマサド・ボウロス氏は、「トランプ氏ほどアフリカの味方だった大統領はいない」と主張し、友好関係を強調しました。また、リベリアのサラ・ベイソロー・ニャンティ外相は、現地メディアに対し「不快感は感じていない」と述べるなど、火消しに追われた様子がうかがえます。
今回のトランプ氏によるリベリア大統領への英語に関する発言は、過去の言動とも相まって、アフリカ各国からの強い反発を招きました。「見下されている」と感じる声は、トランプ氏のアフリカに対する認識や態度への根深い不信感を示しています。事態の収拾が図られているものの、今回の件は、国際政治における言葉の選び方と、文化的・歴史的背景への配慮の重要性を示すものです。
参照元
- Yahoo!ニュース(元記事:CNN) https://news.yahoo.co.jp/articles/cd714a48fcb771a2f2096ef9f0e48083e4d2802e