「MXグランプリ」が放つ異彩:お笑い賞レース戦線に現れた“カタヤブリな異端”

昨今、お笑い賞レースが隆盛を極めている。この週末も「ツギクル芸人グランプリ」(フジテレビ)や「ABCお笑いグランプリ」(朝日放送)といった大型賞レースが開催され、多くの注目を集めた。こうした機会の増加は芸人にとってチャンス拡大という点で歓迎すべきものだが、同時にネタの“消費”や芸人の疲弊、そして「競技化」という側面についての議論も少なくない。そのような状況下で、TOKYO MXが今年から新たにスタートさせた「MXグランプリ」が、既存の賞レースとは一線を画す異彩を放っている。

TOKYO MXで放送されるお笑い賞レース「MXグランプリ」の番組サイトを示す画像TOKYO MXで放送されるお笑い賞レース「MXグランプリ」の番組サイトを示す画像

「MXグランプリ」とは何か?

「地上波の最果て」を自称するTOKYO MXで始まった「MXグランプリ」は、「マニアックな異端者たちの逆襲」をテーマに掲げた「カタヤブリな芸人の中から、“笑いの破壊力No.1”を決める」賞レースだ。大会システムは、4月から7月にかけて月1回予選ラウンドを行い、勝ち抜いた芸人が9月の決勝大会で優勝を争うというもの。この大会の最大の特徴は、各審査員がネタを100点満点で採点することに加え、ネタ後の「平場」(フリートークの時間)での人間力も評価の対象としている点にある。そのため、ネタ披露後の平場の時間が他の賞レースと比較して長く設けられているのが特徴だ。司会をケンドーコバヤシが務め、審査員としてハリウッドザコシショウが毎回参加していることからも、大会のハードコアで独自の方向性がうかがえる。

過去大会のハイライトと異端性

「MXグランプリ」は、そのコンセプト通り、これまでの賞レースでは見られないようなカオスな展開を見せている。特に5月大会では、橋山メイデンが“奇跡”のようなパフォーマンスを連発し、他の大会では考えられない400点満点を獲得するという異例の事態が発生した。これはまさに「競技化」されたお笑いとは無縁の、予測不能な面白さが評価される大会であることを象徴している。

今回の出場者と「虹の黄昏」の活躍

今回の予選ラウンドには、サドドド、ジャジャジャジャーン、プーケットマーケット、ユビッジャ・ポポポー、虹の黄昏といった、他のテレビ番組ではなかなか目にしない顔ぶれが揃った。過去2回の予選と比べると、今回は比較的知名度のある芸人も含まれており、その点でも大会の注目度が上がっていることを示唆している。中でも「地下芸人の帝王」と称される虹の黄昏は、多くのファンから期待が寄せられていた存在だ。正直なところ、過去にテレビ出演した際の虹の黄昏は、その実力のわりに爆発的なインパクトを残すことが少ない傾向にあったため、今回の「MXグランプリ」でどのように評価されるかが注目されていた。結果、彼らはいつものハイテンションかつ破天荒なネタを披露し、会場を大いに沸かせた。審査員のザコシショウは「(虹の黄昏は)どこのコンテストにも当てはまらない。(しかし)今日このグランプリは当てはまったな」と、その唯一無二のスタイルが「MXグランプリ」という土壌に適合したことを称賛した。

競技化を超えた「笑い」の可能性

「MXグランプリ」は、緻密に計算されたネタや洗練されたパフォーマンスが評価される近年の「競技化」したお笑い賞レースとは一線を画す。ひたすら「くだらないこと」を全力でやり尽くすという、お笑いの原点とも成れの果てとも見えるスタイルがここでは肯定的に受け止められる。重要なのは、その瞬間、理屈抜きに「ただただ爆笑した」という事実だ。「MXグランプリ」は、既存の枠にとらわれない、異端だからこそ可能な「笑い」の多様性と可能性を示している。

参考資料

  • てれびのスキマ/週刊文春 2025年7月17日号
  • Yahoo!ニュース (掲載元)