約5年前、多くの人に愛されたプロレスラーの木村花さん(享年22)が、自ら命を絶ちました。彼女は、フジテレビのリアリティー番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」への出演後、SNS上で激しい誹謗中傷に晒されていました。花さんの母で元プロレスラーの木村響子さんは、番組側が「出演者の心身の健康への注意や配慮を怠った」として、フジテレビや共同制作会社を提訴。現在も裁判は続いています。響子さんは、番組出演がいかに花さんを精神的に追い詰めていったかを証言し、「フジがしたことは人権侵害だ」と訴えています。
木村花さんと母・響子さんのツーショット写真。テラスハウス出演中の誹謗中傷問題に関連。
出演の経緯と母の思い
テラスハウスは、男女6人がシェアハウスで共同生活を送る様子を観察するリアリティー番組です。花さんはオーディションに合格した際、長年好きだった番組に出られることを非常に喜んでいました。プロレスをより多くの人に知ってもらう機会になるという期待も大きかったでしょう。花さんは生前、「自分のプロレスで、困っている人やマイノリティーの人を元気にしたい」とよく話していました。これは、インドネシア人の父親を持つミックスルーツであることから、時に差別を受けた経験に基づいた願いだったと思われます。
一方、母である響子さんは、花さんのテラスハウス出演について複雑な思いを抱いていました。番組が初期の爽やかな青春物語から、次第に過激な炎上を呼ぶ内容へと変化している印象を受けていたからです。しかし、花さん本人が張り切っている様子を見て、水を差すようなことは言えず、見守るスタンスをとることに決めました。
「コスチューム事件」と誹謗中傷
2020年3月31日、Netflixで配信された回で、共演者の男性が花さんの大切なプロレスコスチュームを誤って洗濯乾燥機に入れ、縮ませて着用不可能にしてしまう「コスチューム事件」のシーンが放送されました。この放送後、男性の帽子を投げ捨てるなどした花さんに対し、SNS上では「死ね」といった苛烈な誹謗中傷コメントが殺到しました。
この放送日、花さんはリストカットをしました。響子さんはすぐに「自分にとって大事な人たちと、大事な人たちが大事に想う自分を絶対に見失うな」というメッセージを送り、花さんはそのメッセージ画面を保存していたといいます。花さんのそばにいた友人によると、花さんは「心は死んでいたけれど、みんなが優しく守ってくれたから頑張れた」と話していたそうです。
番組への不満と辞めたくても辞められない状況
テラスハウス出演にあたり、花さんは放送内容に関する守秘義務や、違反した場合に多額の損害賠償義務を負うという同意書にサインしていました。そのため、花さん自身から番組への直接的な不満を聞くことはほとんどありませんでした。
しかし、一度だけ花さんは涙ながらに「すごく悪意のある編集をされることがある」「あの人たち(番組制作陣)は、出演者のことを人間だと思ってない」と打ち明けたことがありました。花さんは番組スタッフとも仲が良かったため、自分の攻撃的な部分ばかりが強調された放送を見て、より強く裏切られた気持ちになったのかもしれません。響子さんが「そんなにつらいなら出演を辞めてもいいんじゃない?」と提案したところ、花さんは「辞めたいのになかなか辞めさせてもらえないんだ」と返答したといいます。これは、花さんが亡くなるわずか一週間前の出来事でした。
結論:続く裁判と訴える人権侵害
木村響子さんは、テラスハウスの制作側が番組出演者を人間として尊重せず、視聴者の反応を煽るような編集を行った結果、娘が追い詰められたと主張し、裁判を通して責任追及を続けています。これは単なるエンターテインメント番組の問題ではなく、出演者の人権が侵害された重大な事案であると訴えています。裁判の行方が注目されます。
参考文献
- Yahoo!ニュース / 朝日新聞 他 (記事内容に基づく)