ロシアのプーチン政権は、米国のトランプ政権がウクライナへの防空兵器などの追加支援にかじを切ったことを受け、これまでのトランプ氏懐柔戦略に見切りをつけ、前線での戦闘にさらに重点を置く姿勢を強めている。ウクライナ全土への大規模な無人機攻撃を急増させるなど、軍事的な圧力を顕著に強めている状況だ。
ロシア大統領府報道官ドミトリー・ペスコフ氏、米トランプ氏の声明への警戒感を示す
ロシア、トランプ氏懐柔から軍事圧力へ転換か
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は11日、トランプ大統領が予告した14日の「重大発表」について、「我々は声明の全てのニュアンスを注意深く記録する」と述べ、米国の動向に対する警戒感を示した。
プーチン政権はこれまで、対露融和姿勢を示すトランプ氏を称賛し、抱き込む戦略をとってきた。これは、「停戦」の成果を急ぐトランプ氏を丸め込み、米国の後押しでウクライナに事実上の降伏を迫ることを目算したものとみられる。
しかし、トランプ氏は5月末にプーチン大統領に対し「火遊びをしている」と非難するなど、和平に協力姿勢を示さないことへの批判トーンを強めた。ロシアメディアによれば、こうした発言を受け、プーチン政権は7月上旬、国営メディアに対し、それまで控えていたトランプ氏に関する批判や否定的な報道を許可したという経緯がある。
ウクライナへの大規模ドローン攻撃急増
ロシア軍は6月以降、ウクライナ全土への無人機攻撃を急増させている。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は7月13日、ロシア軍が過去1週間で長距離無人機1800機以上を発射したと明らかにした。多い日には1日700機以上が使われ、ポーランド国境に近いリビウなどウクライナ西部も広範に標的となっている。これは、戦闘の長期化は和平交渉においてウクライナ側に不利になるだけだと脅す狙いがあると考えられる。
ウクライナ、米国との連携強化
一方、ウクライナ側は、トランプ氏の方針転換を機に米国との関係強化をさらに進める構えを見せている。トランプ政権でウクライナ特使を務めるキース・ケロッグ氏は14日、首都キーウでゼレンスキー氏と会談し、ウクライナの防空強化や対露制裁などについて協議を行った。ゼレンスキー氏は会談後、自身のSNSに「有意義な話し合いが行われた」と投稿し、米国との連携の重要性を強調した。
プーチン政権の戦略変更は、今後のウクライナ情勢において軍事的側面の重要性が増すことを示唆している。トランプ氏の新たな姿勢とウクライナへの軍事圧力強化が、戦況や将来的な和平交渉にどのような影響を与えるか、注視が必要である。