参院選の焦点:就職氷河期世代への支援策と現実

20日投開票が迫る参院選において、日本社会が長年抱える課題の一つである「就職氷河期世代」への支援策が重要な争点として浮上しています。バブル崩壊後の厳しい経済状況下で就職活動を行ったこの世代には、現在も非正規雇用や低賃金で働く人々が多く、将来、特に老後の生活や年金に対する深い不安を抱えています。本記事では、長野県で公立学校の講師として二十数年間勤める40代後半の男性の事例を通して、氷河期世代が直面する現実と、参院選での具体的な支援策への期待について掘り下げます。

就職氷河期世代が直面する困難を示すイメージ就職氷河期世代が直面する困難を示すイメージ

公立学校講師の抱える不安定な雇用と将来不安

長野県南信地方で公立学校の講師を務めるこの男性は、自身のキャリアを「使い勝手良く使われてきた」と表現し、不安定な雇用状況に長年苦悩しています。講師という立場は、制度上は原則として半年ごとの契約更新であり、毎年「来年も仕事があるだろうか」という不安を抱えながら教壇に立っています。安定した正規雇用への転換を強く望んでおり、そのため教員採用試験を二十数年にわたり受け続けています。給与水準も正規職員に比べて低く、月々の手取りは約20万円強。この収入では結婚も難しく、教員住宅に一人暮らしをしながら、持病の通院費や車の維持費、さらには将来の不安に備えて加入している個人年金保険料(月約2万円)などを支払うと、貯金に回せる余裕はほとんどないと言います。

氷河期世代が経験した「狭き門」

男性が大学4年生だった1990年代後半、長野県の教員採用試験の合格倍率は20倍近くに達する非常に厳しい状況でした。当時の就職氷河期を象徴するような「狭き門」に阻まれ、男性は不合格となりましたが、公立学校の講師の職を紹介されたことを機に長野県に移住しました。当時の状況と比較すると、近年の小中学校や高校などの教員志願者数に対する採用予定者数の割合は1.8倍から4.6倍と、かつてほどの超難関ではなくなっています。この歴史的な背景が、多くの就職氷河期世代が非正規や不安定な職に留まる一因となっています。

給与明細を確認し、老後の不安を抱える公立学校の男性講師給与明細を確認し、老後の不安を抱える公立学校の男性講師

身分保障なき雇用が生んだ深刻な経験

男性が雇用の不安定さを特に痛感したのは、2019年に職場でのパワーハラスメントなどが原因で適応障害と診断され、仕事を辞めざるを得なくなった時でした。「講師は身分保障が何もない」という現実が突きつけられました。退職後、生活はたちまち困窮し、生命保険を解約したり、親に借金をしたりして凌がなければなりませんでした。一時は飲食店や塾講師など五つのアルバイトを掛け持ちし、早朝から深夜まで働く過酷な生活を送りましたが、それでも年収の手取りは約220万円程度。国民年金の保険料さえ支払えない期間も発生するなど、経済的な基盤の弱さが露呈しました。

参院選に求める具体的な支援策

このような経験から、男性は就職氷河期世代全体が抱える構造的な問題の解決を強く願っています。彼のような不安定な立場で長年社会を支えてきた人々が正当に報われ、安心して暮らせるための具体的な支援策が不可欠です。今回の参院選では、各党がこの世代への支援を公約に掲げていますが、男性は単なるスローガンではなく、「使い勝手良く使われてきた」と感じる人々が未来に希望を持てるような、実効性のある政策の提示を注視しています。就職氷河期世代が抱える課題への取り組みは、単に特定の世代の問題ではなく、日本社会全体の持続可能性に関わる重要なテーマであり、参院選での論戦を通じて、その解決に向けた確かな一歩が踏み出されることが期待されます。

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