北朝鮮のチェ・ソンヒ外相とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は先日、北朝鮮の元山で会談し、両国の協力関係を一層強化していく方針で一致しました。特に、北朝鮮軍がウクライナとの戦争におけるロシアのクルスク州解放作戦に参加したことが、両国間の緊密な連携を示す事例として強調され、国際政治の動向に注目が集まっています。今回の会談は、不安定化する世界情勢の中での両国の立場と今後の協力の方向性を示すものとして重要視されています。
軍事協力「無敵の兄弟愛」として評価
ロシアのラブロフ外相は会談で、北朝鮮軍がクルスク州解放作戦に参加したことについて、「両国関係が無敵の兄弟愛と言えることを示す事例だ」と述べました。同外相は、北朝鮮の兵士たちがロシア兵士と共に「血と命を捧げ」、クルスク州の解放を早めたと強調しました。これに先立ち、北朝鮮は約1万5千人の兵力をウクライナでのロシアの作戦遂行のために派遣しています。北朝鮮のチェ外相もまた、クルスクへの派兵を「両国の協力の最高水準を示す事例」であり、「両国の協力の新しい時代を開いた歴史的事件」と評しました。このように、両国は軍事分野での協力を積極的に評価し、その重要性を対外的にアピールしています。
北朝鮮のチェ・ソンヒ外相とロシアのラブロフ外相が元山で会談し、両国の協力強化について協議する様子
元山観光活性化へロシアが協力約束
ラブロフ外相はさらに、会談地の元山リゾートへのロシアからの観光客誘致を増やすため、航空便を含む環境整備に貢献すると約束しました。「ロシアの観光客がここをさらにたくさん訪れるようになると確信する」とし、「ロシアは航空便の運航を含め、可能なすべての方法で貢献する」と述べました。これは、ロシアが観光分野を通じた経済協力にも意欲を示していることを意味し、北朝鮮の経済、特に外貨獲得に繋がる可能性が指摘されています。元山は北朝鮮が近年力を入れている観光開発地域であり、ロシアからの観光客増加は北朝鮮にとって重要な支援となります。
露朝、帝国主義に対抗し連携深化
チェ外相は、ロシアとの協力強化への強い意志を改めて示しました。「帝国主義者の覇権的陰謀に対抗し国際正義を守ろうとするロシアの立場と、主権と領土保存のためのロシアの政策を、無条件的に変わらず支持する」と述べ、ロシアへの支援は「北朝鮮の戦略的選択と意志」であると強調しました。これは、両国が西側諸国、特に米国主導の国際秩序に対抗する姿勢を共有していることを明確に示しています。ラブロフ外相の元山訪問についても、「両国関係が崩れない協力レベルに格上げされた状況で、戦略的状況認識を深めようとするロシア政府と国民の熱望を反映したものであり、伝統的友好協力関係をすべての分野で拡大、発展させていこうとする意志を示すもの」と語りました。露朝両国は昨年6月、プーチン大統領の平壌訪問を機に「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結しており、この条約には一方が戦争状態に置かれた場合の相互支援が盛り込まれています。今回の会談は、この条約に基づく連携をさらに具体化する動きとして捉えられます。
露朝両国旗の前で会談する外相ら。戦略的パートナーシップ強化の動きを象徴
ラブロフ外相、北朝鮮に滞在継続
ラブロフ外相は、マレーシアのクアラルンプールで開催されたASEAN外相会議に出席した後、3日間の日程で北朝鮮を訪問しました。同外相は13日まで北朝鮮に滞在し、チェ外相との第2回戦略対話を継続する予定です。継続的な対話を通じて、両国の間で様々な分野での協力強化に向けた具体的な議論が進められると見られています。
今回の露朝外相会談は、軍事協力、観光推進、そして政治的連携を含む多岐にわたる分野での両国関係の深化を確認する機会となりました。特に、ウクライナ情勢を巡る両国の共通認識と連携姿勢が改めて示され、昨年締結された戦略的パートナーシップ条約に基づく協力関係がさらに強化される見通しです。今後の両国の動向は、東アジア及び世界の安全保障環境に影響を与える可能性があります。