イタリアでパスタをナイフで切る動画が炎上、米女性の食べ方に批判殺到 – 文化論争の背景

最近、SNS上で世界的に注目を集めている動画が、イタリアの食文化に関する熱い議論を再燃させています。米国人旅行者がイタリア・ヴェネツィアのレストランでパスタをナイフで切って食べる様子を投稿したところ、その「衝撃的な食べ方」が瞬く間に拡散。特にイタリアの伝統を重んじる人々からの批判的な声が相次ぎ、異なる文化圏での食事マナーの解釈について大きな波紋を呼んでいます。

物議を醸した「パスタ切断」動画の詳細

この動画は、2025年6月に数カ国を巡るひとり旅中のチャリース・ブライン氏(37歳)がTikTokに投稿したものです。動画は「イタリアでパスタを食べる」とシンプルに表示されており、ヴェネツィアの潟に浮かぶ小島ムラーノにあるレストランでスパゲッティを食べる様子が映し出されています。ブライン氏は緊張した面持ちでナイフを手に取り、皿の上のパスタを切り始めます。麺を切った後、軽く笑みを浮かべてナイフを置く姿が捉えられています。投稿には「麺がめっちゃ長い」とのキャプションが添えられました。ブライン氏によれば、レストランの誰からも食べ方について注意されることも、スプーンを勧められることもなく、ワインを注がれただけだったとのことです。

フォークでパスタを食べる様子、イタリア料理のイメージフォークでパスタを食べる様子、イタリア料理のイメージ

SNS上の賛否と文化理解の重要性

ブライン氏の動画は2025年6月11日の投稿から320万回以上再生され、その食べ方について世界中のSNSユーザーから様々な反応が寄せられました。TikTokのコメント欄は「私はイタリア人。もう二度とやるな!」「イタリア人じゃないのに気分が悪い」「なぜ私をそんなに叫ばせるの」といった批判的な意見で溢れました。多くのユーザーが、イタリアの食文化に対する無理解を指摘した形です。

一方で、「イタリア人だけど、好きなように食べればいいと思うよ。休暇なんだからリラックスしなきゃ」「イタリア人として言うけど、スパゲッティは自分が一番食べやすいように食べればいいと思う」と、個人の自由や旅行中のリラックスを尊重する声も一部見られました。

ブライン氏自身は、普段はパスタをナイフで切ることはないと述べつつ、「今ではしっかり学んだ。パスタを切るのは大ごとだってことと、あれは”ヌードル”じゃなく”パスタ”だってわかった」と語り、今回の経験を通じて異文化理解を深めた様子です。

イタリアにおける伝統的なパスタの食べ方

今回の議論が大きな反響を呼んだ背景には、イタリアにおけるパスタの伝統的な食べ方に対する強い意識があります。イタリアでは、スパゲッティなどの長いパスタはナイフで切るのではなく、フォークのみを使って皿の上で器用にくるくると巻きつけて食べるのが正しい作法とされています。これは、パスタ本来の食感やソースとの絡み具合を最大限に楽しむための伝統的な方法であり、ナイフを使う行為は「子供の食べ方」と見なされたり、場合によってはマナー違反と捉えられたりすることがあります。一部の料理を除き、スプーンを使うことも一般的ではありません。こうした文化的な背景から、外国人観光客による「パスタ切断」は、イタリア人にとって文化的な違和感として強く映ることが少なくありません。

ヴェネツィアでのパスタを巡る一連の出来事は、国際的な旅行における文化的な習慣への理解の重要性を改めて浮き彫りにしました。SNSを通じて瞬時に情報が共有される現代では、何気ない行動が予期せぬ文化論争を引き起こす可能性を秘めています。しかし、このような事例は、異なる文化を持つ人々が互いの多様性を学び、尊重する貴重な機会を提供します。今後、海外を訪れる際には、現地の文化やマナーに対する配慮が、より充実した旅の経験に繋がるでしょう。

参考文献