米国のドナルド・トランプ大統領は14日、ホワイトハウスの大統領執務室にて、ウクライナへの新たな武器供与を発表しました。この支援は北大西洋条約機構(NATO)加盟の欧州諸国の資金で賄われるとされ、同時にロシアの戦費に影響を与える可能性のある新たな関税措置についても言及しました。この強硬な姿勢は、ウクライナにおける紛争の終結に向けたトランプ氏の焦りと、プーチン露大統領への不満の表れと見られています。
今回の発表を受け、ロシアの株式市場は意外にも2.7%上昇しました。これは、ロシア側がより厳しい制裁を予想していたため、今回の内容がそれより穏やかだったことに安堵したと分析されています。しかし、ロシアの大衆紙「モスコフスキー・コムソモーレツ」は同日付の紙面で、「ロシアとアメリカはウクライナをめぐって新たな対立局面に突入しつつある」と警鐘を鳴らし、「トランプの『月曜のサプライズ』は、我が国にとって好ましいものではない」と報じました。
ウクライナ戦争終結へ向けプーチン露大統領への制裁強化を示唆するドナルド・トランプ米大統領
実際、今回の発表はロシアにとって「好ましいもの」ではありませんでしたが、制裁発動が50日後であるため、ロシアには対抗措置を講じたり、実施を遅らせたりする余地が残されているという側面もあります。それでもなお、トランプ氏の発表は、ロシアに対するこれまでの「ムチよりもアメ」という対話重視の姿勢から、より強硬なものへと転換したことを示しています。トランプ大統領は、今年1月にホワイトハウスへ復帰した際、ロシアによるウクライナ侵攻の終結を外交政策の最優先課題の一つに掲げていました。
これに対し、ロシアはここ数カ月、「分かった、でも……」という反応を取り続けてきました。例えば今年3月、ロシアはトランプ大統領が提案した包括的な停戦案を歓迎しつつも、西側諸国によるウクライナへの軍事支援や情報提供の停止、さらにウクライナ軍の動員解除を前提条件として求めました。ロシアは平和を望んでいると主張し続けていますが、戦争の「根本原因」が解決されなければならないという立場です。ロシア大統領府(クレムリン)は、この「根本原因」について、ウクライナやNATOといった「集団としての西側」からロシアへの外的脅威によって引き起こされたという見解を示しています。しかし、2022年2月にウクライナへの全面的な軍事侵攻を開始したのはロシア自身であり、この行動が第2次世界大戦以降で最大規模の地上戦をヨーロッパにもたらしたことは明白です。
この「分かった、でも……」というロシアの姿勢は、しばらくの間、アメリカによる追加制裁を回避しつつ、戦争を継続するための時間稼ぎとして機能していました。トランプ政権は当初、ロシアとの二国間関係の改善とウクライナ和平交渉の実現を重視し、ロシア政府との対話において「ムチ」よりも「アメ」を優先する戦略を取ってきました。しかし、クレムリンに批判的な声は、この「分かった、でも……」という対応は、ロシアが時間を稼ぐための戦術だと警告していました。それでもトランプ大統領は、プーチン大統領を説得し、合意に導けると信じていたようです。
しかし、プーチン氏は急いで合意に至る様子を見せていません。クレムリンは戦場で主導権を握っていると考えており、平和を望んでいると主張しながらも、それはあくまで自分たちの条件下での話に過ぎません。その条件には、西側諸国によるウクライナへの武器供与の停止が含まれていますが、トランプ氏の今回の発表で、それが実現する見込みはないことが明らかとなりました。
トランプ氏はプーチン氏に「不満がある」と述べていますが、その失望は一方通行ではありません。ロシア側もまた、アメリカ大統領への期待を失いつつあるようです。モスコフスキー・コムソモーレツ紙は、14日の紙面で次のように記しています。「(トランプ氏は)明らかに誇大妄想に取りつかれている。そして、とても大きな口をたたく」。今回の発表は、米露間のウクライナ問題を巡る溝が依然として深く、和平実現への道のりが複雑であることを改めて浮き彫りにしています。
参考文献
- (c) BBC News
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