ルーマニア中部のカルパティア山脈で、野生のクマに襲われたイタリア人観光客の男性(49)が死亡する事故が発生した。この男性が事故前日、クマの近くで自撮り写真をSNSに投稿していたことが明らかになり、野生動物への不注意な接近の危険性が浮き彫りとなっている。
ルーマニアでのクマ襲撃事故詳細
今月3日、カルパティア山脈で、バイクで走行中のイタリア人観光客オマール・ファラン・ジンさん(49)が、野生のクマに襲われ死亡する痛ましい事故が発生した。
翌日、他の観光客からの通報を受けた現地警察と緊急救助隊は連携して捜索活動を開始。約1時間におよぶ捜索の末、近くの渓谷でオマールさんの遺体を発見したと発表した。
危険なSNS投稿が示唆する不用意な接近
報道によると、オマールさんはこの事故の前日、自身のFacebookアカウントに複数の写真と動画を投稿していた。投稿された写真の中には、かなり至近距離に立つとみられる大きなクマとの自撮り写真や、子グマを背景に幸せそうに笑ってポーズを取る姿が含まれていた。
さらに、別の動画では、バイクで道路を走行中に道端に座っているクマを発見し、「クマだ! 本当に美しい。こっちに近づいてくる」と興奮気味に叫ぶ声が記録されており、野生動物への不用意で危険な接近行為があったことがうかがえる。
ルーマニアでのクマ事故、クマの近くで自撮りをする人物のイラスト
被害者への追悼と当局の対応
オマールさんはイタリアのミラノにあるマルペンサ空港で働いていたことが分かっている。彼のFacebookには、数十人の友人たちから「君を忘れない」「素敵な人だった」といった追悼のメッセージが多数書き込まれている。
ルーマニア当局は、今回の襲撃に関与した野生のクマを安楽死させたことを発表した。
過去の事例と増えるクマの脅威
ルーマニア国内では、クマによる死亡事故は今回が初めてではない。昨年7月には、ブチェジ山で登山中の19歳の女性がクマに襲われ、絶壁から転落して死亡する痛ましい事故が発生している。
ロシアを除く欧州で最も多くのヒグマが生息するルーマニアでは、今年初めにルーマニアの山林研究所が発表した研究結果で、国内のクマ個体数が最大で1万3000頭に達し、以前の推定値に比べ約2倍に増加していることが判明。野生動物の生息圏拡大と人里近くでの出没リスクが高まっており、観光客や住民への一層の注意喚起と、野生動物との安全な共存に向けた適切な対策が求められている。
今回のルーマニアでの事故は、野生のクマのような大型動物への不注意な接近がいかに危険かを示した。SNSでの注目を求める安易な行動は、命を落とす結果を招きかねない。増加するクマの生息数を踏まえ、野生動物との安全な共存のため、適切な距離を保つことの重要性が改めて浮き彫りとなっている。