2025年7月15日、参議院議員通常選挙の投票日が目前に迫る中、自民党の石破茂総裁は四国中央市での街頭演説で、野党が主張する「ガソリン暫定税率廃止」(通称:ガソリン減税)に対し、慎重な見解を示しました。国民の生活に直結するガソリン価格の問題は、来る参院選の主要な争点の一つです。本稿では、石破総裁の発言の背景を理解するため、ガソリン税の歴史と仕組み、そして暫定税率廃止を巡る与野党間の政治的駆け引きについて深掘りします。
参院選を控え、ガソリン暫定税率廃止について語る石破茂自民党総裁の演説風景
ガソリン暫定税率とは?その歴史と複雑な仕組み
ガソリン暫定税率は、1974年に当時の田中角栄政権が道路の建設・整備に必要な財源を補う目的で導入しました。当初は一時的な措置でしたが、二度のオイルショックなどを経て、1979年以降は1リットルあたり25.1円が上乗せされる形となりました。
この暫定税率は、2008年3月末に一度失効しました。しかし、当時の福田康夫内閣がその存続を強く主張し、復活。さらに2009年4月には、税金の使途が限定されない一般財源化が図られました。その後、2010年度の税制改正において、1リットルあたり53.8円というガソリン税率が「当分の間」維持されることが決定され、現在に至っています。
現在のガソリン税53.8円の内訳は、1949年に定められた本来の税率分28.7円と、1974年から上乗せされた25.1円の二つに分かれます。この上乗せ分の25.1円が、一般的に「暫定税率」と呼ばれている部分です。この複雑な構造から、現在のガソリン1リットルあたりの小売価格は「(ガソリン自体の価格+石油石炭税2.8円+ガソリン税53.8円)×1.1(消費税10%)」という計算式で算出されており、ガソリン価格の大部分が税金で占められている実態があります。
暫定税率廃止を巡る政治の攻防
高騰を続けるガソリン価格を抑制するため、この暫定税率の廃止は長らく政治の大きな焦点となってきました。実際に2024年12月には、自民党・公明党と国民民主党の各幹事長が会談し、時期は未定ながらもガソリン税の「暫定税率」部分を廃止する方針で合意しました。
その数日後の12月20日には、自民・公明両党が「令和7年度与党税制改正大綱」を決定。大綱には「いわゆる『ガソリンの暫定税率』は、廃止する。上記の各項目の具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で密に協議を進める」と明記されました。これにより、国民の間ではガソリン価格の引き下げへの期待が高まりました。
しかし、この問題はその後も予断を許さない状況が続いています。2025年7月4日には、自民党の森山裕幹事長が「今年度で終了するためには、12月に税制改正で方向性を決めることが重要」と発言。これに対し、国民民主党の玉木雄一郎代表は自身のSNSで「ガソリン暫定税率の廃止は、昨年12月に自公国の幹事長間で決定済みの話。むしろ、来年4月まで絶対に廃止しない宣言だ。今年12月に、代わりに増税を決めるつもりだろう」と反論し、与党の姿勢に疑問を呈しました。
参院選の主要争点としてのガソリン税
石破総裁が参院選直前にガソリン暫定税率廃止に慎重な見解を示したことは、この問題が単なる税制論争に留まらず、国民の生活実感に直結する重要な政治的争点であることを改めて浮き彫りにしました。歴史的に複雑な経緯を持つガソリン税、そしてその一部である暫定税率の廃止を巡る与野党の駆け引きは、来る参院選の結果だけでなく、今後の政局にも大きな影響を与える可能性があります。国民が求めるガソリン価格の安定化は実現するのか、今後の政府・与野党の動向に引き続き注目が集まります。
参考資料
- Yahoo!ニュース: 参院選直前、石破総裁が「ガソリン暫定税率廃止」に言及 (2025年7月17日掲載)