ロシア国家安全保障会議副議長であるドミートリー・メドベージェフ前大統領は7月17日、西側諸国が実質的にロシアに対し全面戦争を仕掛けていると指摘し、ロシアは全面的に対応し、必要であれば「予防的攻撃」も開始すべきだと述べました。この発言は、現在の国際情勢における緊張感を一層高めるものとして注目されています。
メドベージェフ氏の「全面戦争」発言の詳細
国営タス通信が報じたメドベージェフ氏の発言によれば、今日起きていることは「代理戦争」の様相を呈しているものの、その本質はすでに西側諸国による「全面戦争」であると強調されました。具体的には、西側からのミサイル供与、衛星情報収集活動、対ロシア制裁パッケージの実施、そして欧州における軍事化の動きなどが、その証拠として挙げられています。メドベージェフ氏は、西側諸国がロシアを「歴史的な異変」として嫌悪し、何世紀にもわたってロシアの弱体化を図ってきたと主張。これはロシアと西側諸国の間に根深く存在する不信感と対立構造を浮き彫りにしています。
ドミートリー・メドベージェフ前大統領がモスクワで演説する様子。西側諸国との「全面戦争」発言と「予防的攻撃」の可能性について言及。
ロシアの対応と「予防的攻撃」の意図
メドベージェフ氏は、このような状況に対し、ロシアは「相応に行動する」必要があり、「全面的に対応する」べきだと述べました。さらに、必要であれば「予防的攻撃を開始する」という、極めて強い表現を用いてロシアの断固たる姿勢を示唆しました。
一方で、同氏はロシアが欧州を攻撃する可能性があるという西側当局者の発言については「全くのナンセンス」と一蹴しています。これに関連して、プーチン大統領が「ロシアには北大西洋条約機構(NATO)と戦う意図も、『欧州を攻撃する意図』もないと明言している」ことを改めて指摘し、ロシアの対欧州・対NATO戦略に関する誤解を払拭しようとしました。これは、ロシアが西側との全面的な軍事衝突を望んでいないが、自国の安全保障のためにはあらゆる手段を辞さないという複雑なメッセージを伝えていると解釈できます。
クレムリンの見解:ペスコフ報道官のコメント
メドベージェフ氏の発言について、ロシア大統領府のドミートリー・ペスコフ報道官は詳細なコメントをする立場ではないとの認識を示しました。しかしながら、ペスコフ報道官はメドベージェフ氏が「豊富な経験があり、自身の意見を述べているだけ」だと指摘。さらに、欧州の「対立的な環境」に注意を向けたメドベージェフ氏の見解は正しかったとの見解を示し、クレムリンもまた西側との関係において緊張感が高まっていると認識していることを示唆しました。
今回のメドベージェフ氏の発言は、ロシアと西側諸国間の地政学的緊張が依然として高いレベルにあり、互いの不信感が深まっている現状を鮮明に映し出しています。特に「予防的攻撃」という言葉の使用は、国際社会にさらなる波紋を広げる可能性があります。今後の国際情勢の推移が注目されます。
参考文献
- Reuters (2025年7月17日) ロシア前大統領、西側は「全面戦争」仕掛け、ロシアは予防的攻撃すべき