ブラジル南東部サンパウロ州の沿岸都市グアルジャで発生した痛ましい事件は、社会に大きな衝撃を与えている。14歳の少女が自宅に放火し、11カ月の妹を死亡させ、2歳の弟に重傷を負わせた。事件後、少女は友人に犯行を打ち明け、警察の取り調べに対し「もう限界だった」「弟妹の世話に疲れた」と驚くほど冷静に語ったという。この事件の背景には、少女が母親から日常的に暴力を受けていたという家庭内の問題があったと報じられており、地域の社会問題として深く受け止められている。(16日付G1など報じる)
悲劇の発生と被害状況
事件は午後2時10分頃、グアルジャ市内の集合住宅で発生した。通報を受けて警察が現場に到着した時には、既に近隣住民の迅速な行動により火災は鎮火されていた。しかし、時すでに遅く、11カ月の乳児は命を落とし、2歳の男児は気道損傷と顔面熱傷という重傷を負い、小児集中治療室(PICU)での入院を余儀なくされた。男児の容体は現在安定しているものの、その影響は計り知れない。
ブラジル・グアルジャ市の放火事件現場の様子。消防隊が到着する前に近隣住民によって火は鎮火された。(G1記事より)
事件の背景と犯行の計画性
加害者である少女は、事件発生後に父親に付き添われ警察に出頭した。彼女の供述から、その日の朝に母親と口論になり、母親から「家族の生活が困難なのはお前のせいだ」と非難され、平手打ちや椅子を投げつけるといった脅しを受けていたことが明らかになった。母親はその後、仕事へと出かけたという。
少女は自身の置かれた状況、特に弟妹の育児に強い不満と疲労を抱えていた。犯行は計画的であったとされ、弟妹を寝かしつけた後、丸めた紙に火をつけ、弟の寝室のカーペットに引火させた。その後、部屋に鍵をかけ、台所のガスコンロのバルブを開放。さらにアパートの玄関を施錠し、煙が外部に漏れないよう窓を全て閉めて現場を離れた。犯行の周到さは、ガスボンベが爆発するまでの時間を事前にインターネットで調べていたという彼女の自供からも見て取れる。この行動は、単なる衝動的な犯行ではなく、明確な意図をもって実行されたことを示している。
犯行後の驚くべき行動と冷静な供述
事件現場を離れる際、少女は死亡した弟妹の小さな靴を2足手に取り、それを近所の友人のもとへ持って行った。友人に靴を見せながら、「これが私の弟妹の最後の思い出よ。彼らはもう死んでしまったから」と、極めて冷静な口調で語ったという。この言葉は、犯行後の彼女の精神状態の異様さを際立たせる。
また、彼女には5歳の妹もいたが、事件発生時には近所の公園で遊んでいたため無事であった。少女はこの妹について「手がかからないから命を奪う必要がなかった」と述べており、その言葉は聞く者にさらなる衝撃を与えた。
事件を担当するグラウクス・ヴィニシウス・シルヴァ警部は、この事件を「恐怖を覚える陰惨な事件」と表現。「少女は非常に冷静で、私の目をじっと見つめながら淡々と話し、『弟妹の面倒を見るのに疲れた。自由になりたかった』と明かした」と証言しており、少女の動機が育児疲れとそれに伴う「自由への欲求」であったことが裏付けられている。
司法と社会の対応
警察は少女を殺人及び殺人未遂の容疑で勾留し、少年裁判所に送致した。事件の重大性から、釈放される可能性は極めて低いと見られている。この事件を受け、地元公安局は事態を重く受け止め、同様の悲劇を防ぐため精神保健プログラムの拡充や家族支援の強化に努める方針を示している。
グアルジャ市もまた、公式声明で事件への深い遺憾の意と、被害者家族への哀悼の念を表明した。市保健局や福祉局は状況を厳しく注視しており、必要に応じた精神保健支援や家族支援を提供する体制を整えているという。市は、今回の事件が、家族や子どもたちへの心のケアと支援の重要性を改めて浮き彫りにするものと位置付けている。
この事件は、単なる犯罪としてだけでなく、家庭内暴力、育児の負担、若者の精神的健康といった現代社会が抱える複雑な問題が絡み合った、深い社会問題を提起している。
参考文献:
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