柴咲コウ氏率いる「レトロワグラース」社員大量離脱の背景:好調な女優業と新たな経営方針の狭間で

2025年7月15日、「女性自身」が、女優・柴咲コウ氏が代表を務める会社「Les Trois Graces(レトロワグラース)」において、社員が大量に離脱していると報じました。同社は直近2期連続で黒字化を達成し、順調な経営状況にあると見られていた矢先の出来事であり、その背景には柴咲氏の個人的な方向性の変化と、それに伴う経営方針の転換が影響している可能性が指摘されています。

レトロワグラースの経営実態と人員流出の経緯

2016年11月に設立されたレトロワグラースは、柴咲コウ氏のマネジメントを行う個人事務所として機能する傍ら、同氏プロデュースのファッションブランド「MES VACANCES(ミヴァコンス)」やオーガニック製品の企画・販売も手掛けています。親会社であるモブキャストホールディングスが2025年2月に公表した決算説明資料によると、同社は2023年度および2024年度において2期連続の黒字を達成し、今期もさらなる業績成長を見込むとされていました。

しかし、その順調な業績とは裏腹に、2025年初頭頃からマネージャーやスタッフの退社が相次ぎ、社員の総入れ替えに近い状況に陥っていると報じられています。芸能記者の情報によれば、レトロワグラースは設立以来、累積赤字が2億円を超え、一時は倒産寸前の状態にあったと「週刊新潮」(2023年8月19日号)が公認会計士のコメントを引用して伝えています。特に2021年の決算では約1億6千万円の赤字を計上していたとされ、柴咲氏が女優業で稼ぎ、会社を立て直した結果、現在の黒字経営に至ったと見られています。

レトロワグラースを経営する女優・柴咲コウレトロワグラースを経営する女優・柴咲コウ

躍進する女優業と音楽活動への新たな注力

柴咲コウ氏の女優としての活動は、近年非常に好調です。2022年以降、『沈黙のパレード』、『月の満ち欠け』、『Dr.コトー診療所』、『ミステリと言う勿れ』といったヒット映画に立て続けに出演し、高い演技力が評価されています。現在公開中の『でっちあげ~殺人教師と呼ばれた男』でも好演を見せ、さらに11月公開の映画『兄を持ち運べるサイズに』での主演、2026年公開予定の『時には懺悔を』への出演も既に発表されており、その多忙なスケジュールは会社の売上にも大きく貢献していると考えられます。

これらの成功にもかかわらず、柴咲氏本人は会社が黒字化した今、音楽活動を活動の中心に据えたいという意向を持っていると報じられています。この方針転換を裏付けるように、2025年3月には、RAG FAIRやLittle Glee Monsterなどを手掛けた敏腕音楽プロデューサーで、元ワタナベエンターテインメント取締役の吉田雄生氏が、親会社の関連会社代表として招聘されました。柴咲氏は2024年12月に吉田氏も作詞などに協力した新曲『紫陽花』を含む最新アルバムをリリースし、同年12月から2025年2月にかけて全国12都市を巡るツアーを開催。さらに今年11月からも全国17都市でのツアーを予定するなど、精力的に音楽活動を展開しています。

経営方針の齟齬と柴咲コウ氏の思考の変化

芸能記者の取材によると、順調な女優業よりも音楽活動に軸足を移すという柴咲氏の方針に対し、戸惑いを覚えるスタッフが少なくなかったとされます。中には方針に異を唱える社員もおり、それが今回の大量離脱につながったと報じられています。

また、柴咲氏自身の思想にも変化が見られます。2025年7月13日に公開されたインタビューサイト「CHANGE」では、「野菜の有機栽培」や「音楽の周波数」といったテーマに強い関心を示していることが明らかになりました。例えば、北海道での有機栽培について語り、長崎県の佐世保で微生物の力を借りた農業を実践する「菌ちゃん先生」(NPO法人 大地といのちの会 理事長、EM菌農業の提唱者)との出会いが自身の好奇心を加速させたとしています。さらに、異なる周波数を持つ音楽が持つヒーリング効果や、それが人に与える影響を自ら実験したいという意欲も示しており、自然や心身の健康、持続可能性といったテーマへの傾倒がうかがえます。

レトロワグラースは3月に入り、離脱したスタッフの補充のためか求人採用を開始しました。その募集要項には「心身の美しさと地球の美しさの追求、持続可能な調和社会の実現」といった企業理念が強く打ち出されており、柴咲氏の個人的な価値観に共感する「ファン」の採用を目指すなど、その意向が色濃く反映されています。

かつてはコロナ禍を機に北海道への「移住」を決め、積極的にYouTubeでその生活を発信していた柴咲氏ですが、近年は動画公開が減り、現在の生活拠点が不明確な状況です。会社経営において代表が活動方針を決めるのは当然の権利ですが、柴咲氏の新たな方向性にどこまで多くの社員がついていくことができるのか、今後の彼女の手腕と経営判断が問われることになります。

参考文献

  • 「女性自身」2025年7月15日号
  • 「週刊新潮」2023年8月19日号
  • モブキャストホールディングス 2025年2月公表 決算説明資料
  • インタビューサイト「CHANGE」2025年7月13日公開記事
  • NPO法人 大地といのちの会 公式ウェブサイト