参院選を控え、与党自民党の劣勢が伝えられる中、石破茂首相は野党が掲げる消費税減税に対して、「安定財源なしに減税するような無責任なことはできない」と財源不足を盾に批判を繰り返してきた。しかし、選挙を見据え、地方創生交付金を倍増させ、地方へ大盤振る舞いしたのは石破首相自身である。その交付金の使途を追うと、全国各地で税金の無駄遣いと疑われる事業が展開されている実態が明らかになった。もはや減税批判には何の説得力もなく、石破首相の“無責任”な姿勢が浮き彫りになっている。
発端は、石破首相が提唱した「地方創生2.0」である。これまで年間約1000億円で推移していた地方創生交付金が、今年度は約2000億円と倍増され、第2世代交付金として全国の地方自治体へばら撒かれた。具体的には、951の自治体による2090件の事業が国の交付金対象に採択されている。しかし、これらの事業の中には、「これが本当に地方創生の列島改造なのか?」と、その税金の使途に大きな疑問符が付くものが数多く存在する。
地方創生2.0の公共事業と税金無駄遣いの実態
「ハコモノ」建設は時代遅れか?
「地方創生2.0」と謳いながらも、旧態依然とした「ハコモノ」建設に多額の税金が投入されている事例が散見される。例えば、岩手県八幡平市では、「賑わい創出拠点整備」と称して事業費10億円をかけ、大更駅のロータリー前に複合施設を建設中だ。県都・盛岡市からは電車で35分の距離にあり、駅前は閑散としている。近隣の商店主は以下のように語る。
「電車は2時間に1本しか来ないし、住民のほとんどは車を利用します。そもそも電車の本数が少ないのに、駅前の賑わいを取り戻すためにハコモノを建てるという発想自体が古い。施設には図書館や子育て施設が入ると言いますが、それなら病院があって路線バスも走っている駅の反対側に建てた方が良かったのでは。商店の目線から見れば、施設建設のために一帯の住民が立ち退くよりも、以前のように利用客がいた方がずっとマシでした」
大規模イベント開催費への疑問
地方創生交付金は、「世界ラリー選手権」(愛知県豊田市など)、「かがわマラソン」(香川県)、「サンフェスHACHINOHE」(青森県八戸市)といった大規模イベントの開催費用にも注ぎ込まれている。しかし、自治体が国の税金でイベントを永続的に開催し始めたら、いくら資金があっても足りなくなるのは明白だ。こうした一時的なイベントへの多額の支出が、持続可能な地方創生に繋がるのか、疑問が残る。
業者への「丸投げ」が横行する事業
さらに、事業内容が実質的に業者への「丸投げ」となっているケースも枚挙に暇がない。北海道函館市の「人が輝きまちが輝く交流都市」プロジェクトや、岐阜市の「すべての人に居場所と出番あり、自分らしく生き生きと暮らすことができるまちづくり」などは、その事業内容を詳しく調べると、費用の大半が業者への委託費として計上されている。函館市企画部計画推進室計画調整課は、「(委託先として)広告会社や旅行会社、映像制作会社等を選定している」と説明している。このような実態では、地方創生の本来の目的から逸脱し、単なる業者への利益供与に繋がっているのではないかとの批判も避けられないだろう。
石破首相が財源不足を理由に消費税減税を批判する一方で、「地方創生2.0」の名の下に多額の税金、実に2000億円もの資金が、全国各地で疑問符の付く事業に消えている。これは、まさしく首相自身の“無責任”な姿勢を示すものであり、納税者への説明責任が強く求められる。