YouTubeのお悩み相談番組『大愚和尚の一問一答』は登録者数70万人を超える。そこに寄せられる悩みのトップはずばり「お金」。和尚の著書『お金と宗教の歴史』は歴史・宗教史の本でありながら、「お金」の悩みを手放すヒントが書かれている。今回はお金に対する仏教のユニークなスタンスを語る。
■お坊さんにも、お金の悩みはある
私たちの悩みには、大きく分けて2つの方向性があります。「何をしていいかわからない」と「どうしていいかわからない」です。
この2つがわからないと、ぐるぐると迷ってしまうのです。お金の悩みも同じです。これは結局、「何をして、どう生きていったらいいのかわからない」ということです。
なぜなら現代においては、生きることとお金とが固く結びついているからです。みなさんも「お金さえあればなんとかなる」と、きっと思われているはずです。
仏教を修めたお坊さんが、お金の悩みから解放されているかといえば、そんなことはありません。お金の悩みだらけです。例えば、浄土真宗はお寺の平均収入を出していますが、それを見るとお寺そのものの収益というのは平均300万円ほどと言われています。
観光客が押し寄せたり、立地がよくて土地を貸していたり、檀家さんが非常に多いなどというお寺以外は、本当に大変な状況です。
この先、人々から信仰がさらに失われれば、お葬式や法事も縮小していくでしょうから、経済基盤の弱いお寺から順番に朽ちていくことになるでしょう。
現実的な面でいえば、お寺は普通の家とは違うので、「この扉を変えよう」といってホームセンターで買ってくるわけにはいきません。瓦(かわら)が使われている屋根の雨漏りの修繕に1000万円を用意しなければならないなど、維持するだけでも簡単ではありません。
さらに、いくらお金を用意しても、職人さんがいなくなれば、修繕をしてもらうことはできなくなります。「しっくい」を塗ってくれる職人さんも、建物の状況に合わせて材木を調整してくれる大工さんも本当に少なくなりました。これからはちょっとした修繕ひとつとっても、資金の面でも、職人さんの手配の面でもさらに難しくなるはずです。
■人はストイックな姿勢に心を打たれる
私がこのように、お金の話をすると非常に嫌がる方がおられます。そういった方というのは、どうやら僧侶に「清貧であってほしい」と思われているようです。その気持ちもわからないではないのですが、実は仏教に清貧の思想はありません。