オーストラリア大規模保育士虐待事件:2000人超に性感染症検査勧告、当局対応に批判集中

オーストラリア南東部ビクトリア州で、保育士による乳幼児への性的虐待という衝撃的な事件が発覚し、波紋を広げている。州警察は今年5月、メルボルン在住の保育士、ジョシュア・ブラウン容疑者(26)を、生後5カ月から2歳までの8人の幼児を虐待した容疑で逮捕した。この事件の深刻な点は、容疑者が過去8年間にわたり23カ所の保育施設で勤務していたことであり、地元当局はこれまでに2000人以上の乳幼児とその家族に対し、性感染症検査を勧告するという異例の事態に発展している。この大規模な対応は、保護者や世間に大きな不安を与え、当局の対応への厳しい目が向けられている。

逮捕と容疑の詳細:広がる被害の規模

英紙ガーディアンや英BBC放送(電子版)の報道によると、ブラウン容疑者は7月初めに、8人の乳幼児に関する70件以上の罪で正式に起訴された。初公判は9月に予定されており、事件の全容解明が待たれる。

容疑者の広範な勤務履歴が事態をさらに複雑にしている。2017年1月から2025年5月までの間に勤務した全ての保育施設とその期間が公表され、これに基づき、当局は今月15日、新たに800人以上の乳幼児を性感染症検査の対象者に追加した。これにより、検査対象者は総計で2000人を超える規模となり、この事件がどれほど広範囲に影響を及ぼしているかが浮き彫りになっている。

オーストラリアの保育施設で発覚した乳幼児への性的虐待事件を表すオーストラリア国旗オーストラリアの保育施設で発覚した乳幼児への性的虐待事件を表すオーストラリア国旗

批判される当局の対応と過去の通報

今回の事件で特に強い批判を浴びているのは、ビクトリア州当局の対応だ。ブラウン容疑者を巡っては、今から2年前にも、性的虐待ではないものの、児童養護施設で8人の児童を虐待したとして州当局に通報されていたことが明らかになっている。にもかかわらず、容疑者は子ども関連の仕事に就くための許可証を保持し続けており、保育士として勤務を継続できていた。この事実は、児童保護システムにおける監視体制の不備や、情報共有の不足を露呈するものであり、なぜ早期に再発が防げなかったのかという疑念が、被害家族や国民の間で高まっている。

運営グループと保健当局の見解

一連の施設運営に携わる複数のグループは、被害に遭った家族に対し、「捜査に全面的に協力し、すべての被害家族を支援する」との声明を発表している。これは、運営側の責任を果たす姿勢を示すものだ。

また、ビクトリア州の最高保健責任者は、広がる不安に対し、「連絡を受けたすべての家族に、子どもが感染症に感染する潜在的なリスクは低いことを保証したい」と述べ、冷静な対応を呼びかけている。しかし、この保証がどれほどの安心感を与えるかは、今後の捜査の進展と情報公開にかかっている。

児童保護の課題と今後の動向

今回のオーストラリアにおける保育士による性的虐待事件は、児童保護システムにおける深刻な課題を浮き彫りにした。過去の通報が適切に処理されなかった経緯は、同様の事件の再発防止に向けて、子ども関連業務の許可制度や監視体制の抜本的な見直しが必要であることを示唆している。9月に予定されている初公判での詳細な証言や、当局による今後の情報公開、そして被害家族への継続的な支援が、この悲劇的な事件から学ぶべき教訓と、より安全な児童保護環境を構築するための道筋を示すことになるだろう。

参考文献

  • 英紙ガーディアン
  • 英BBC放送(電子版)
  • Yahoo!ニュース(記事提供元:産経新聞)