不動産バブルの崩壊や深刻なデフレに見舞われ、先行き不透明感が増している中国経済。年金制度崩壊の危機も囁かれる中、漂流する世界2位の経済大国が向かう先はどこなのか。独裁色を強める習近平政権が追い詰められて台湾を進攻する「暴走シナリオ」とは。日本と中国双方の政治・経済に精通したオピニオンに定評がある東京財団政策研究所 主席研究員の柯隆氏に、詳しく話を伺った。短期連載全4回の第3回。(取材日:6月19日)
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中国経済を泥沼に引きずり込んだ習近平政権の大罪
――まさに泥沼ですね。この状況を打開するための方策はあるのでしょうか。
非常に重要なご質問です。打開策を考えるには、まず、これまで中国経済がなぜあれほどイケイケドンドンで成長できたのかを振り返る必要があります。2010年には日本を追い抜き、世界第2位の経済大国になった。その原動力は、紛れもなく「経済の自由化」であり、アリババに代表されるような「民営企業」の活力でした。
ところが、習近平政権が発足してからのこの十数年間、国営企業を重視する政策の下で、民営企業はどんどん弱体化させられていきました。
ですから、やるべきことは明確です。まず第一に、民営企業にもっと自由を与えることです。中国人は決して怠け者ではありません。彼らは意欲に満ちています。今、何もできないのは、手足をがんじがらめに縛られているからです。
第二に、富裕層の海外流出を食い止めることです。今、中国の勝ち組たちが、こぞって祖国を捨てています。東京のタワーマンションを買っているのも彼らです。これは異常事態です。彼らが安心して中国にとどまれるようにするにはどうすればいいか。それは、彼らの「私有財産を法的に保護する」と、国が明確に宣言することです。中央政府だろうが地方政府だろうが、いかなる理由があっても個人の財産を没収することは絶対にしない、と。
そうすれば、言葉も通じない日本に来ている勝ち組たちも、中国に帰ると思います。やる気のある経営者が国内に戻れば、中国経済は徐々に上向くはずです。問題は、習近平政権がそこまで思い切った決断を下せるかどうか、です。