教師の過重労働が社会問題となる中、働き方改革の必要性は広く認識されながらも、具体的な業務見直しには保護者や教員自身からの反発がつきまとい、抜本的な改革が進まないのが実情です。このような「総論賛成、各論反対」の状況下で、改革の鍵を握る校長などの管理職が果たすべき役割は大きいとされています。教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が、大阪市立大宮西小学校校長の原雅史氏に話を聞いたところ、大阪市が「教員の働き方満足度日本一」を目指し、大胆な施策に乗り出していることが明らかになりました。
教員を取り巻く深刻な状況
全国的に教員不足が深刻化しているのは周知の事実です。初任給の引き上げや勤務時間の見直しといった様々な施策が講じられていますが、小中学校の教員採用試験倍率は2倍を下回り、中途退職や病気休職が後を絶ちません。現場の献身的な努力によってかろうじて維持されている日本の公教育は、このままでは崩壊の危機に瀕していると言っても過言ではありません。このような現状は、喫緊の課題として社会全体で取り組むべき問題となっています。
大阪市の「教員の働き方改革」への挑戦
このような厳しい状況の中、大阪市は「教員の働き方満足度日本一」を掲げ、「学校園における働き方改革推進プラン」を策定しました。このプランに基づき、教員でなくてもできる業務を行う専門スタッフの配置や、システム・アプリの積極的な活用など、多岐にわたる取り組みを進めています。教員が本来の業務に集中できる環境を整備することで、教育の質の向上と教員の定着を目指しています。
大阪市が教員の働き方改革推進のため配布した「教員の働き方満足度日本一」を目指すチラシのイメージ。
市長通達による「学校・地域行事の見直し」
さらに注目すべきは、新型コロナウイルス感染症が5類に移行した後、地域のお祭りや運動会などの行事に教職員の参加が再び求められるケースが増加したことを受け、今年度、大阪市長名で「学校や地域行事の見直し」に関する理解を求める通達が出されたことです。これは、教職員がより本来の業務に時間を充てられるよう、地域行事等への参加の位置づけを見直し、地域や保護者に対しその趣旨への理解を求めることが狙いです。長年の慣例から、とくに管理職が地域行事に顔を出すことが「当たり前」となっている地域も少なくありません。一見すると、この通達は地域連携や地域に開かれた学校という文脈に逆行するように思えるかもしれません。しかし、市長名でこのような異例の通達が出されるほど、現場の教員の業務負担は逼迫しているのが現状であり、その切実な声に耳を傾ける必要性が高まっています。
大阪市のこの取り組みは、教員の過重労働問題を解消し、持続可能な教育環境を築くための重要な一歩と言えるでしょう。慣例にとらわれず、現場の実態に即した改革を推進していくためには、行政、学校、地域、そして保護者間の深い理解と協力が不可欠です。
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