参院選の終盤戦、7月中旬。日本維新の会は、本拠地である大阪選挙区(改選数4)で異例の総力戦を展開していた。府内の地方議員約200人に対し、毎日100人への電話投票依頼とその達成状況の報告という厳しいノルマが課せられた。これは、当選圏内と見られていた新人・佐々木理江とは異なり、最後の議席を争い当落線上をさまよっていた新人・岡崎太陣営からの指示だった。
大阪での異例の苦戦と参政党の台頭
平成28年以来、2議席を獲得し牙城とされてきた大阪での維新の苦戦は、大阪をルーツに持ち、急速に支持を広げた参政党の台頭によって引き起こされた。古参の維新議員からは「報告まで求める指示など出たことがない。今までで一番厳しい選挙だ」との声が漏れるほどだった。最終的に佐々木は1位、岡崎は2位で当選し、維新は全体で改選6議席を上回る7議席を確保したものの、代表の吉村洋文をはじめとする党幹部の表情は硬かった。
参議院選挙の苦戦を受け、大阪市内で記者会見を行う日本維新の会 吉村洋文代表
全国規模での伸び悩みと比例代表の得票減
維新の厳しい表情には理由がある。全国の選挙区候補15人のうち、当選したのは大阪と京都のみ。6年前に議席を得ていた東京や兵庫では敗北を喫した。さらに深刻なのは比例代表の得票数で、令和4年の前回選の約784万票から4割以上減の約437万票となり、参院選では過去最低を記録した。その半分近くは近畿での得票であり、第三極として700万票台に乗せた国民民主党や参政党に水をあけられ、全国規模での支持拡大には至らなかった実態が明らかになった。
主要争点の埋没と他党の躍進
参院選において日本維新の会は、社会保険料引き下げによる現役世代の負担軽減を最重要政策として掲げた。しかし、参政党の「日本人ファースト」に代表される外国人政策が主要争点として急浮上し、維新の政策が埋没した感は否めない。吉村代表は20日夜の記者会見で、「日本の人口構造を考えると、高すぎる社会保険料を下げるのは絶対必要だ」と改めて強調した。現役世代の負担軽減は国民民主党も主張しており、所得税が生じる「年収の壁」引き上げを中心に訴え、改選4議席から17議席へと大幅に増やし、非改選と合わせた議席数は維新の19を上回る22となった。14議席を獲得した参政党とともに、国民民主党も第三極として大きく躍進した。
SNSが左右した選挙結果
伸長した国民民主党と参政党に対し、維新は微増にとどまった。交流サイト(SNS)が大きな影響力を持つ現代において、ネットでの発信力が選挙結果を左右したことは間違いない。今回の参院選は、主要争点の変化や各党のネット戦略が、従来の選挙戦に新たな影響を与えたことを示唆している。
今回の参院選は、日本維新の会が従来の牙城である大阪でも苦戦を強いられ、全国的な伸び悩みを見せた選挙となった。その背景には、参政党や国民民主党といった新たな「第三極」の台頭、政策争点の変化、そしてSNSを通じた情報発信力の差が大きく影響している。これらの要素は、今後の日本の政治動向を左右する重要な鍵となるだろう。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/06c0cd36ee1b89b0a5991f85e6e93504d3efc85b