長野県伊那市荒井に店を構える和菓子店「越後屋菓子店」の看板商品「伊那のまゆ」が、今、全国的な人気を博し、入手困難な状況が続いています。動画投稿アプリTikTokでの紹介をきっかけにSNSで爆発的に話題となり、注文が殺到した結果、急激な需要増に生産が追い付かず、オンラインショップや電話での注文受け付けを一時休止する事態に発展しています。
発売当初からの道のり:地域銘菓への成長
「伊那のまゆ」は、越後屋菓子店の竹村裕社長(65)の父である先代・新太郎さんが昭和30年代に創作した歴史ある菓子です。ホイップクリームを最中の皮で包み、チョコレートでコーティングするという独特の製法が特徴です。発売当初はほとんど売れなかったといいますが、数年後にはその「他にない」斬新な味わいが評判を呼び、現在では伊那市を代表する銘菓として地元住民に長く愛されてきました。
SNSでの爆発的拡散と注文の急増
今年の4月、あるインフルエンサーが「伊那のまゆ」を食べる動画をTikTokに投稿したことが、人気沸騰の決定的なきっかけとなりました。この動画を皮切りに、「伊那のまゆ」を試食して味をレビューする動画や、菓子をかんだ際のサクサクとした特徴的な音を聞かせるASMR動画などがSNS上で次々と投稿され、瞬く間に拡散されました。その結果、オンラインショップへの注文は通常の10倍ほどに急増。5月中旬には、注文受け付けを開始するとわずか5分で完売するという状況が常態化しました。
生産体制の現状と顧客の熱い支持
6月に入っても「伊那のまゆ」の人気は衰えることなく、1日100本以上の電話注文が殺到するようになりました。この注文量に対応しきれなくなったため、越後屋菓子店は6月下旬からオンラインおよび電話での注文受け付けを休止せざるを得なくなりました。これまでは水曜日のみだった定休日を木曜日にも増やし、生産量の確保に努めています。以前は1日約500個の生産で十分でしたが、現在は毎日2,000個から3,000個を製造している状況です。
越後屋菓子店に「伊那のまゆ」を求めて並ぶ長い行列の様子
実際、ある土曜日の午前中、開店時刻の午前9時を前に、越後屋菓子店の前にはすでに長蛇の列ができていました。群馬県太田市から訪れた会社員の松島勉さん(57)は、午前7時から並んでいたといい、「動画を見てどうしても食べたくなり買いに来た。友人にも配って自慢したい」と話し、大量の「伊那のまゆ」50個を購入していきました。
社長の分析と地域への期待
竹村社長は、今回のようにインターネットを通じて商品が話題になるのは初めての経験だと語ります。社長は「多くの人がまだ食べたことがないという珍しさが、人気に火を付けたのではないか」と分析しています。また、全国各地から来店客が伊那市を訪れていることに喜びを感じており、「お菓子を通じて伊那に来てくれる人が増えるのは非常に嬉しいことです。これをきっかけに、さらに多くの人に伊那の魅力や地域の良さを知ってほしい」と、地域の活性化への期待を語っています。
現在、「伊那のまゆ」は10個入り1,680円(税込み)などで販売されており、越後屋菓子店の店頭と一部の小売店でのみ購入が可能です。
参考文献:
- Yahoo!ニュース. (2025年7月23日). オンラインと電話注文中止に. (情報源は日付が未来のため、元の記事の公開日に準じる)
https://news.yahoo.co.jp/articles/651cca0d49390ba51625c1a30b181d0b4a34ecbd