日米間の関税交渉が相互関税15%で合意に達した7月23日、石破茂首相の今後の去就に再び大きな注目が集まっています。参院選での歴史的敗北後も、石破首相は「政治課題に道筋をつける」ことを続投理由としてきましたが、日米合意の達成により、党内からは「退陣すべきだ」との声が一層強まりました。実際にこの日、一部メディアでは「石破首相退陣へ」との報道が流れましたが、首相本人は「報道されているような事実は全くない」とこれを完全に否定。自民党内の空気は今、どうなっているのでしょうか。
石破首相への退陣要求が活発化
ここ数日、石破首相の退陣を求める国会議員らの会合が活発化し、地方組織からも次々と退陣要求が噴出しています。ある閣僚経験者は現状について、「地方議員からは突き上げられ、若手議員は両院議員総会の開催を求める動きがあり、石破さんは四面楚歌の状態です」と説明します。長年、石破首相を見てきたというこの人物は、「今は自信を失っているように見えます」と付け加え、「『愚や愚や汝を如何せん』(もう何もしてあげられない)といった状況です」と表現しました。政権発足から8カ月、これといったレガシー(遺産)を残せていないことも、不満の背景にあるとされます。
続投の背景にある課題と人材不足
自民党が「沈んでいく船」と形容される中、政権を降りることを求める意見がある一方で、再び政権を奪取できるか不透明な現状も存在します。石破首相が続投を望むのは、政権発足以来目立った成果がなく、自身の「レガシー」を確立したいという思いがあるためと見られています。また、党内には有力な次期首相候補が見当たらないという深刻な人材不足も、続投を容認せざるを得ない要因となっています。高市早苗氏については「深い思想がない」、小泉進次郎氏については「経験不足」との厳しい評価が党内にはあり、明確なリーダーシップを発揮できる人材が不在であることが、石破首相の苦境をさらに深めています。
政策運営への疑問符と「アベノミクス」からの変節
石破首相の数少ない「成果」として挙げられるのは、小泉氏を農林水産大臣に抜擢したことですが、その小泉氏が随意契約で備蓄米を放出し、米価格を下落させたことに対しては疑問の声も上がっています。農水省は7月22日、スーパーでの米の平均価格が8週連続で値下がりし、半年ぶりに5キロ3,500円台になったと発表しました。しかし、前述の閣僚経験者は、これを「火が点いたところに水をぶっかけただけ」と評し、石破首相が安倍政権時代には「反アベノミクス」を掲げていたにも関わらず、首相就任後は「選挙に勝つことばかり考えだした」と批判。具体的には、1人2万円・住民税非課税者と子供には1人4万円の現金支給など、短期的な票獲得を狙った政策に終始していると指摘し、「ドンと座って、骨太の政策を示さなきゃいけなかった」と、一貫した国家ビジョンの欠如を嘆いています。
結論
日米関税交渉の合意達成は、石破政権にとって一つの節目となり得ましたが、同時に石破首相の去就問題に火をつけました。党内外からの退陣要求が強まる中、石破首相は続投の意向を固持していますが、その背景には明確な政権運営の成果不足と、次期リーダー候補の不在という深刻な課題が横たわっています。過去の「反アベノミクス」路線からの変節や、場当たり的な政策運営に対する党内の不満は根深く、石破首相がこの四面楚歌の状況をいかに乗り越え、政権の求心力を取り戻せるかが、今後の焦点となるでしょう。