高額役員報酬の衝撃:トヨタ豊田会長19億円超、自動車業界最新ランキング

近年、有名企業の幹部が受け取る「役員報酬」の高額化が加速しています。かつては海外から専門の経営者を招く企業に限定されていた現象でしたが、現在では各業界のサラリーマン役員にまでその波が及んでいます。特に、2024年度決算期の有価証券報告書が出揃い、1億円以上の報酬を受け取る幹部の数は過去最多を更新しました。

役員報酬の高騰化:世界基準の競争と日本企業

東京商工リサーチの坂田芳博氏によると、長年の調査から「苛烈な人材獲得競争による世界基準の報酬体系の導入が進んだことで、特にグローバル展開する企業で役員報酬が大幅に増額されています」と指摘します。これに合わせ、同業他社も追随する傾向が見られ、10年ほど前には少数だった5億円以上の報酬を得る役員が増加しています。企業は役員報酬が1億円以上の場合、有価証券報告書での個別開示が義務付けられています。『週刊ポスト』は東京商工リサーチの協力を得て、このデータを基に自動車業界の役員報酬ランキングを詳細に調査しました。

自動車業界:トップはトヨタ、日産で異彩を放つ執行役

自動車業界の報酬ランキングでトップに立ったのは、時価総額日本一を誇るトヨタ自動車の豊田章男会長で、その額は19億4900万円に上ります。これに続く2位は同社の佐藤恒治社長で8億2600万円でした。

トヨタ・豊田章男会長、高額役員報酬の背景トヨタ・豊田章男会長、高額役員報酬の背景

注目すべきは3位にランクインした日産自動車執行役のスティーブン・マー氏です。2025年3月期決算で6700億円超の赤字を計上した日産にもかかわらず、マー氏は5億400万円の報酬を得ており、トヨタを追うホンダの三部敏宏社長(6位、4億1700万円)らを上回っています。経済ジャーナリストの福田俊之氏によると、マー氏は北米日産の生え抜きで、財務畑でキャリアを積んだ「切れ者」であり、現在は巨大なEV市場である中国部門の総責任者を務めています。

日産からは、退任した元社長の内田誠氏(7位、3億9000万円)を含め、5人もの役員が2億円以上の報酬を受け取っています。福田氏は、株主総会で高額報酬への批判が殺到した背景には、役員報酬を国際水準に引き上げようとしたカルロス・ゴーン体制(1999~2018年)の名残があると分析しています。ゴーン氏は過去に40億円近くの報酬を受け取った年もあり、この観点から見れば、トヨタの報酬額もまだ低いと見ることもできます。

業界横断の報酬動向

自動車業界にとどまらず、他の業界でも高額役員報酬の事例が増えています。関連記事「【総力大調査】自動車・商社・電機・製薬・不動産・携帯キャリア「有名企業の高額役員報酬」実名ランキング 10億円超え役員が続々登場、全体1位は豊田章男氏を上回る44億円」では、6つの主要業界における役員報酬上位30名が実名で紹介されており、役員報酬の高騰化が日本経済全体に広がるトレンドであることが示唆されています。

この傾向は、グローバル化が進む現代において、優秀な経営人材の獲得競争が激化していることを如実に示しています。世界市場で戦う日本企業にとって、国際的な報酬水準に合わせることは避けて通れない課題となりつつあります。

参考文献